米VMwareは8月29日から9月1日にかけて、米国サンフランシスコで、年次イベント「VMware Explore 2022」を開催した。会場での開催は2019年以来、3年ぶりとなった。本稿では、8月30日に「The Multi-Cloud Universe : Bold Innovations and Insights to Accelerate Your Business」というテーマの下、行われた基調講演の模様をお届けする。

マルチクラウドのイベントとして刷新

これまで、同社の年次イベントは「VMworld」という名称で開催されていたが、今年より変更された。その点について、最高経営責任者(CEO)を務めるラグー・ラグラム氏は、次のように語った。

「VMworldは当初、データセンターのプロのコミュニティだった。しかし、今は拡大して、データセンターだけでなく、いろいろな役割の人が活躍しており、マルチクラウドのコミュニティとなった。だから、イベントの名称を変えた。VMware Exploreでは、マルチクラウドで起きているすべてのことを取り上げる。マルチクラウドの中心はここにある」

  • 米VMware 最高経営責任者(CEO) ラグー・ラグラム氏

ラグラム氏は、今年5月にVMwareがBroadcomに買収されたことに触れ、基調講演に参加していたBroadcom CEOのHock Tan氏を紹介した。ただし、Broadcomに関して、詳しい話はなかった。

  • Broadcom CEO Hock Tan氏

今、企業に必要なのは「Cloud Smart」

VMwareはここ数年、マルチクラウドの推進を戦略として掲げているが、ラグラム氏は、クラウドを利用する企業にとって、「『Cloud Chaos』の状態から『Cloud Smart』に進化することが必要」と訴えた。「Cloud Smart」とはどういうことか。

ラグラム氏は、「Cloud Smart」の特徴として、「統一した開発者体験の提供」「適切なクラウドを選択」「従業員への摩擦のない経験の提供」を挙げた。

「アプリケーションが本番稼働するための時間を短縮したければ、開発者が開発にかかる時間を短縮する必要がある。開発者のオペレーショナルモデルが同じことも重要」(ラグラム氏)

ラグラム氏は「昨年はCloud Smartに必要なビジョンを紹介したが、今年はCloud Smartを実現する製品を紹介する」と述べ、新製品を次々と発表していった。

例年に増して、今年は多くの製品の発表が行われた。ここでは、ラグラム氏が挙げた主要な製品に絞って紹介しよう。

vSphere 8、VMware vSAN 8発表

今回、サーバ仮想化製品の最新版「VMware vSphere 8」とストレージ仮想化製品の最新版「VMware vSAN 」が発表された。両製品について、ラグラム氏は「モダンインフラの構成要素で、どんなところでも利用できる。構築に2年間かかっており、次の10年間を支える製品」と語った。

「VMware vSphere 8」の目玉の新機能が、CPUやGPUに加え、データ処理ユニット(DPU)への対応だ。vSphere on DPU(旧称:Project Monterey)として提供される。vSphere on DPUは、テクノロジパートナーのAMD、Intel、NVIDIAのほか、OEMシステムパートナーのDell Technologies、Hewlett Packard Enterprise、Lenovoとの連携により、分散型モダンワークロードのスループットとレイテンシのニーズに対応するという。

vSphere on DPUは、DPU上でインフラ サービスを実行し、このサービス実行をワークロードドメインから分離することで、インフラのセキュリティを高める。

「VMware vSphere 8」はDPUへの対応により、同等以上のパフォーマンスを達成しながら最大20%のCPUコアを削減し、削減したコアを用いることで、より高いレベルでのワークロードの統合とTCO削減を実現するとしている。

  • 「VMware vSphere 8」ではDPUに対応した

「vSAN 8」は、ゼロから構築された新しいvSAN Express Storage Architectureにより、パフォーマンス、ストレージ効率、データ保護、管理機能が強化されている。加えて、最新のTLCストレージ デバイスをサポートしているほか、最大4倍に効率化されたデータ圧縮によって最大40%のTCO削減を実現するという。

マルチクラウド管理の新製品「VMware Aria」

ラグラム氏が時間をかけて紹介したのが「VMware Aria」だ。「VMware Aria」は「VMware Aria Cost powered by CloudHealth」「VMware Aria Operations」「VMware Aria Automation」の3つのカテゴリの下、クラウドネイティブおよびマルチクラウド管理のための機能を提供する。

  • マルチクラウド管理のポートフォリオ「VMware Aria」

ラグラム氏は、「VMware Aria」の強みとして、「VMware Aria Grap」を紹介した。これは、マルチクラウド環境の複雑性を把握するグラフベースのデータストア技術で、VMware Ariaのパブリッククラウド管理機能の中核となる。VMware Aria Graphはクラウドネイティブ アプリや環境の運用課題を解決できるよう、ほぼリアルタイムで更新される単一の情報ソースを提供する。

「VMware Aria」では、マルチクラウド環境全体を管理する一元的なビューとコントロールを提供するVMware Aria Hubを軸に、VMware Aria Graphを活用してアプリ、リソース、ロール、アカウントに関する共通の定義を提供する。

「Googleが登場した時、Webのグラフを作り、天才的だった。今回、マルチクラウドの管理において、似たようなことを行った」(ラグラム氏)

マルチクラウドのサポートを前面に押し出しているVMwareだが、今年はマルチクラウドの世界をレベルアップする製品が多く発表された印象を受けた。同社が注力しているKubernetesを中心としたアプリケーション分野でも新しい発表が行われたので、追って紹介したい。