経済産業省が2019年に発表した「 IT人材需給に関する調査」では、2030年には最大79万人のIT人材が不足するとされている。こうした中、注目を集めているのがノーコード/ローコードによる開発手法だ。

7月12日に開催された「TECH+セミナー ローコード/ノーコード開発 Day Jul.システム開発をビジネス戦略のコアに」にて、一般社団法人NoCoders Japan協会 代表理事/プレスマン CINO(Chief Innovation Officer)の高橋翔氏が、ノーコード/ローコード開発の事例を紹介しながら、そのメリットや注意点について解説した。

ノーコード/ローコードでDXの裾野はより広がる

ソースコードを一切書かずに、あるいは少ないソースコードでシステムを開発するノーコード/ローコード開発。高橋氏は、「ノーコードではドラッグ&ドロップなどでモジュールを組み合わせて開発するが、ローコードでは多少のプログラミングが必要となる。近年では、Webサイト作成だけでなく、ECサイト構築や、アプリケーション開発など、幅広い内容がノーコード/ローコードで行えるようになっている」と説明する。

IoTやAI、iPaaS(Integration Platform as a Service)市場が拡大する中、近年多くのノーコード/ローコードツールが登場してきており、高橋氏は今後もこの流れが続くと見ている。さらに、昨今各企業が推し進めているDXにおいても、ノーコード/ローコード開発は重要であると言う。

「DXの流れの中でSaaSの利用が普及していますが、SaaSだけではニッチな現場や特定の用途までカバーできません。ノーコード/ローコードで現場人材が自らシステムを構築できるようになれば、DXの裾野はより広がっていくでしょう」(高橋氏)

  • ノーコードの大きな流れ

ノーコード/ローコードツールの活用事例

続いて高橋氏は、実際に現場で活用されているノーコード/ローコードツールの事例を紹介した。

1. 現場主導のDX×ノーコード

まず最初に紹介されたのは、製造業において現場主導でノーコードツールを活用しDXを進めた事例だ。車体部品メーカーのジーテクトは、検査品質のばらつき、紙・写真データの整理や顧客へのプレゼン資料作成作業などの煩雑さに課題を抱えていた。そこで、業務用モバイルアプリをノーコードで作成できる「Unifinity」を導入。写真やスキャンデータ、バーコードの読み込みなどを1つのアプリで完結できるようにしたところ、検査品質の平準化を実現できただけでなく、資料作成の効率化によって1人あたりの1日の作業を1.4時間程度減らすことに成功したという。

業務用Webアプリをノーコードで開発できる「サスケWorks」を導入した東京都江東区にある砂町銀座商店街では、書類や取引情報を登録できるアプリを非エンジニアが開発。各メディアからの取材対応の問い合わせ窓口を一元化し、タスク管理もアプリ内で行えるようになった。

健康補助食品・医薬品のOEMメーカーであるアピは、BtoBマーケティングに必要なツールをノーコードで作成できる「ferret One」を営業・マーケティングの現場に導入。従来は、Webでの集客がほぼできていなかったというが、導入後3カ月で約80件の問い合わせをWeb経由で獲得したとしている。

2. 複数のノーコード/ローコードツールを組み合わせる

複数のノーコードツールを組み合わせて、より大きなソリューションを構築した事例もある。

無人のレンタルドレスショップ「Empty Dressy」は、予約と鍵の受け取りには「LINE」、Webサイト構築には「Webflow」、決済システムには「Shopify」、鍵の発行には「RemoteLOCK」、データベース管理には「Airtable」といったかたちで、複数のノーコードツールを組み合わせてサービスを運営している。なお、これらの異なるツール同士は、「Integromat(新名称:Make)」というノーコードツールによって連携されている。

ノーコードに特化した人材データベースから適切な人材・チームを提供する「NOCODO Biz」を利用したとあるアパレルメーカーでは、EC、iPaaS、アプリといった各領域のノーコード人材および、ディレクター、マーケッター、コンサルタントを集めてチームを編成。ブランドごとに別々のシステムを利用していたEC基盤を統一した。

  • ノーコード/ローコード人材やスキルを組み合わせてDXを実現(NOCODO Biz)

3. ローコード+コードで全社的にDXを進める場合

高橋氏によると、会社全体をDXしたい大企業など開発が複雑かつ大規模になるケースでは、全てノーコード/ローコードで進めることは難しいと言う。

「現場ではノーコード/ローコード、基幹システムに近いところはIT部門主導でノーコード/ローコード+コードといったグラデーションで考えていくとやりやすいでしょう。また、現場主導でアプリを作成する場合には、シャドーITやセキュリティ対策が必要です。ツールの組み合わせで解決するためには、幅広いナレッジが必要であり、ディレクションも重要となります。ベンダー依存から脱却していくことの難しさもあるでしょう」(高橋氏)

  • ノーコード/ローコード/コードを部門によって使い分けることが必要になる