メディカルテクノロジーズは8月3日、医師の健康確保と勤務環境の改善を目的に2024年4月から施行される医師の働き方改革に向けて、医療現場で働く方々の意識の変革と共通認識の形成をサポートする動画配信サービス「医療従事者のための働き方改革TV」を同日から提供開始したことに先立ち、メディア向けの説明会を開催した。

説明会には、メディカルテクノロジーズ代表取締役の鈴村健二氏、執行役員の小野瀬広剛氏、また有識者として、聖路加国際病院副院長の山内英子氏、元厚生労働省の千正組代表取締役の千正康裕氏、患者・家族と医療をつなぐNPO法人 架け橋 理事長の豊田郁子氏が登壇し、サービスの概要を説明したほか、パネルディスカッションを実施した。

「医療従事者のための働き方改革TV」とは、医師の働き方改革における課題を受けて、改革を推進する立場の方々と現場で働く医療従事者の方々の意識変革を支援するための、動画配信サービス。

  • 医療従事者のための働き方改革TVのイメージ

同サービスでは、「病院の経営層と実際に医療行為や医療サービスを提供する勤務医や現場スタッフとの間に認識の差がある」という医療業界の課題を解決するために、働き方改革の制度概要とポイントを解説するほか、実際の医療機関の取り組み事例などを取り上げる。対象は、医療機関経営層・勤務医管理職をメインターゲットに置いた医療従事者に限定しており、ユーザー登録をすると無料で動画を閲覧することができる。

サービス開始時点では、コンテンツとして「医師の働き方改革の意義と必要性」「医師の働き方改革に関する法制度・解釈」「タスクシフト・タスクシェア」「医療機関における実践の工夫」「休暇に関する法制度」が提供され、今後さまざまなテーマを不定期に発信していく予定だという。

小野瀬氏は、「医師の25人に1人が自死を考えたことがあるという調査データがあるほど、医療現場は過酷な環境です。働き方改革が医療業界にも適応されるということの認識率も低く、特に各上限水準を知っている人は若い人ほど少ない傾向にあります」と、サービス提供に至った医療業界の現状を説明していた。

  • 提供の背景を語る小野瀬氏

またパネルディスカッションでは、「現場(医師)」「患者」「行政」という3つの視点の代表として山内氏、豊田氏、千正氏が登壇した。

  • 右から山内氏、豊田氏、千正氏、働き方改革TVのMCを務める宮原氏

ディスカッションのテーマだった「医師の働き方改革の必要性」について、山内氏は「コロナ禍になり、イレギュラーなことがが起きたら医療現場はひっ迫してしまうということが国民にも伝わったのではないかと思います。このタイミングだからこそ、緊急事態時に備えられる医療体制を働き方改革で作っていかなくてはならないと思います」と、医療業界の働き方改革を進めることの意義を主張していた。

一方で、患者を代表する立場の豊田氏は、医師の働き方改革が進むことで受け入れられない患者数が増えてしまうのではないかという不安を見せつつ、「チームで患者を診るということがもっと広まって、タスクをシェアできるようになっていけば安心して病院にいくことができるようになるのではないかと思います」と、今後の課題を提示していた。

最後に山内氏は、「ピンチこそチャンスだと思っています、われわれは現在、コロナ禍というピンチにいますが、改めて医療の形を見直すきっかけになったことはチャンスと捉えて日本の医療をより良くしていきたいです」と力強く締めくくっていた。