“ココイチ”こと「カレーハウスCoCo壱番屋」を展開する壱番屋が安全認証取得後の改善策として、従業員のスキルと育成管理をシステム化した。導入したのはスキルマネジメントシステム「SKILL NOTE」。これにより、Excelによる管理における課題を解消できたという。
FSSC22000認証取得に合わせてスタッフのスキル管理を見直し
全国に1250以上の店舗を展開する外食チェーンの壱番屋は、栃木、愛知、佐賀に持つ3つの自社工場でカレーソースなどを製造している。「全国のお客さまに提供する製品なので、安心、安全、そして安定供給に心がけてきた」と生産管理部 課長を務める新本周平氏は説明する。
この取り組みをさらに強化するために、食品の安全についてのマネジメントの国際規格であるFSSC22000を2018年に1工場で、2020年に2工場で認証取得した。
3つの工場では約300人が働いている。すでにISO9001を取得していたこともあり、従業員のスキルの管理は行っていた。そうした中、FSSC22000に合わせて、従業員とアルバイトのスキルと資格の整理をさらに細かくやっていくことにした。
壱番屋では、「甘口ソース」など製品別に製造工程が異なる。すべての品種に対して従業員と工程の両方から管理し、教育の予定、実施日、教育対象者、講師などの計画をExcelにまとめていた。しかしこのやり方では、実行管理に課題を感じていたという。力量管理も記録や有効期限の管理をする担当者に負荷がかかっていた。Excelファイルはスタッフもアクセスできるようにしていたが、使い勝手が良いとは言えなかった。
さらには、「Excelのデータも、あるシートではこの人はこのスキルを持つのに、別のシートには反映されていないなど、整合性が取れていないこともあった」と生産管理部 の藤井隆氏は振り返る。「Excelのメンテナンスで手一杯で、この人にはこういう教育を受けてもらって、こんなスキルをつけてもらうというところまでなかなか手が回らない状態だった」
そこで、こうした課題を解決できるシステムはないかと探していたところ、出会ったのが「SKILL NOTE」だった。藤井氏によると、人事ソフトはスキルの共有や配置を支援する機能はあっても、製造業向けではなく、第三者認証にも対応していなかった。一方で、SKILL NOTEは、製造工程を詳細に入力でき、資格の期限なども仕様に含まれていた。同社が特に重要視したのは第三者認証のための機能だ。「FSSC22000規格のための記録や承認申請の負荷が軽減できそうだと感じた。一番イメージに近かった」(藤井氏)という。
最大のメリットは検索性
SKILL NOTE導入を決めたのは2021年3月だが、SKILL NOTEの新システムリリースと歩みを合わせてデータの移行、説明会などの準備を経て、同年7月に本格導入に入った。最初に佐賀工場に導入、9月には3工場すべてに導入して運用に入った。
栃木工場 生産管理課長 薄井大助氏は、SKILL NOTEの最大のメリットを「検索性」と話す。「どの教育が進行しているのか、終わっているのか、実施中なのかが一目でわかる。これまでのExcelでは見逃しが多く、紙に書き出して該当するスタッフに注意喚起していたが、抽出が楽になった」(薄井氏)
今月は「教育を受ける月」といったリマインドがスタッフにメールで通知され、それが管理職にも届くなど、進捗の可視化化も実現された。SKILL NOTEには承認システムが組み込まれているため、教育が終わった後に承認ができるようになり、受講漏れを防ぐのに役立っているそうだ。
SKILL NOTEは全員が閲覧できるが、承認や編集は一部の人のみといった権限管理もできるようになっている。特定のスキルについて何人が取得しているのかもすぐに把握できる。
FSSC22000では通常審査に加えて非通知による審査も行われるが、その際にSKILL NOTEの運用状況をみた審査員から高い評価を得られたという。
効果については、SKILL NOTEに移行することで、「スキルと資格の管理に費やしていた100万円に相当する人件費を削減できた」と藤井氏は話す。
スタッフの評判も上々で、「ラインの管理者がスタッフのスキルを上げながら現場が回るような人員配置を考えながら、この人にこういうスキルをとってもらおうといった管理や計画が楽になったようだ」と薄井氏は話す。
管理の負担が軽減されることで、従業員とのコミュニケーションにさく時間が増え、これが離職率の低下などにつながればという期待も出ているようだ。
「育成計画を立て、それを確認しながら現状を把握できる。スタッフ側も、管理する側も見える化ができたことは、大きなメリット」と新本氏。
SKILL NOTE導入により、各工場が生産管理を含めてしっかりと運用できることを確実にしている段階だが、今後は、スタッフが持つスキルと現場をつなげることなども考えているという。スキルを持たないスタッフの誤投入を防ぐシステムを入れているが、これとSKILL NOTEが連携することで、現在は人が確認している部分を自動化できると薄井氏は期待を語っていた。