NECネッツエスアイは7月20日、同社オフィスである「日本橋イノベーションベース」(東京都日本橋)に開設した「自治体のDX推進に向けた課題解決型ショーケース」(DXショーケース)のメディア向けの見学会を開いた。

2022年6月27日に発表されたDXショーケースでは、「行政事務のデジタル化」「住民サービス向上」「安全・安心」につながる自治体向けのソリューションを見学・体験できる。

今回は見学会で体験したソリューションのうち、「災害対策室を含むBCP(事業継続計画)対策」「収納窓口の効率化」「バーチャル活用の新価値創造」のソリューションを紹介したい。

  • 「自治体のDX推進に向けた課題解決型ショーケース」では、NECネッツエスアイのオフィス内に設置された12のソリューションの見学・体験ができる

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タブレット1つでWeb会議室を災害対策本部へ

「災害対策室を含むBCP対策」ソリューションは、平時は会議室やオンライン研修などで利用している部屋を、有事の際に災害対策本部として転用するための各種機能を統合して提供するものだ。

同ソリューションではタブレットで操作する映像表示システムを利用して、地理情報や気象情報、ニュース番組といった災害時に求められる各種情報源のほか、現場でスマートフォンやタブレット端末で撮影した映像をモニターやサイネージ、プロジェクターにリアルタイムで映し出すことができる。自治体の災害対策やBCPの担当者は、同システムを活用して得られた情報を災害時対応の検討などに役立てられる。

  • 映像表示システムを用いた「災害対策室を含むBCP対策」ソリューションのデモンストレーション

    映像表示システムを用いた「災害対策室を含むBCP対策」ソリューションのデモンストレーション

  • 映像表示システムはタブレットで操作する。画面の分割やオーバーレイ(重ねて表示)も可能で、映し出す映像などの組み合わせを事前登録できるプリセット機能もある

    映像表示システムはタブレットで操作する。画面の分割やオーバーレイ(重ねて表示)も可能で、映し出す映像などの組み合わせを事前登録できるプリセット機能もある

同システムでは、地理情報の上から津波や豪雨による浸水エリアや学校などの公共施設をマッピングすることも可能だ。また、SNSで投稿された災害関連の投稿内容を解析して、位置情報と連携することで地図上にプロットして映し出すこともできる。

このほか、VR(Virtual Reality)を利用したバーチャル型災害対策室を作成し、リアルの災害対策室で表示している映像を共有することも可能だ。例えば、指揮命令者が不在の場合に、バーチャル型災害対策室に参加することで、リアルの災害対策室にいる人と同じ視点で画面に映し出された情報を確認することができる。

  • バーチャル型災害対策室

    バーチャル型災害対策室

非接触の券売機で手数料支払いを効率化

「収納窓口の効率化」ソリューションは、非接触対応の券売機を利用して窓口で行っている現金の受け渡しを機械化するものだ。

  • 「収納窓口の効率化」ソリューション

    「収納窓口の効率化」ソリューション

ソリューションの利用方法としては、例えば住民票を取得するケースでは、まず、受付で発行申請を行うと受付番号とQRコードが記載された紙が発券される。次に、紙に記載されたQRコードを券売機に読み込ませると、受付番号に紐づいた支払い内容と金額が表示され、支払いを行うと領収書を受け取れる。最後に、窓口で受付番号を呼び出されたら、領収書を提出することで住民票を受け取れる。

同ソリューションでは、窓口で申請した内容(申請番号)と紐づいたQRコードで支払いを行う方式としているので、行政サービス誤購入を避けられるという。

  • QRコードを読み取っている様子

    QRコードを読み取っている様子

  • 支払いのデモ画面。タッチパネルの周りの黒い枠が人感センサーとなっているため、パネルに触れずに操作できた

    支払いのデモ画面。タッチパネルの周りの黒い枠が人感センサーとなっているため、パネルに触れずに操作できた

観光促進や技術承継に活用できる「360度バーチャルルーム」

「バーチャル活用の新価値創造」ソリューションでは、天井や床、壁などに360度映像を映し出せる「360度バーチャルルーム」が紹介された。同ソリューションでは自治体の個別のニーズや課題に合わせて、具体的な活用方法を検討しているという。

同ソリューションを観光案内所やアンテナショップに設置すれば、通常では見ることができない観光地(数年に一度しか一般解放されない宝物庫、特定の季節は立ち入りが禁止されている景勝地など)の映像を投影する、といった観光プロモーションが行える。

また、特殊な技術やノウハウの継承にも役立てられるという。見学会では消防隊で利用するケースのデモ映像が投影された。例えば、定年退職した消防隊員が街を撮影した360度映像とともに、エリアごとのポイントを解説したり、天候や季節によって異なる注意点を紹介したり、といったように利用することも可能だ。

  • 「360度バーチャルルーム」の様子。消防隊の隊員がはしご車に乗って、高所から街の特徴などを解説している映像が映し出されている

    「360度バーチャルルーム」の様子。消防隊の隊員がはしご車に乗って、高所から街の特徴などを解説している映像が映し出されている

Microsoft365やkintoneを活用した自動化ソリューションに注力

自治体では業務によってシステムが分かれており、1つの業務フローを完結するのに、2~3回入力作業が発生することも珍しくないという。

見学会でDXショーケースを紹介したNECネッツエスアイ ビジネスデザイン統括本部 エンパワードビジネス統括マネージャーの園部昌也氏は、「公共領域はデジタルを活用した改善、効率化の余地が大きいと考える。当社の技術を活用して自治体職員の働き方改革に貢献していきたい。特に今後は、Microsoft365とkitoneが、自治体の業務自動化のキープラットフォームになると考え、当社では双方への対応を進めている」と述べた。

  • NECネッツエスアイ ビジネスデザイン統括本部 エンパワードビジネス統括マネージャー 園部昌也氏

    NECネッツエスアイ ビジネスデザイン統括本部 エンパワードビジネス統括マネージャー 園部昌也氏

NECネッツエスアイは、地方公共団体の職員に各種行政事務サービスを提供するLG-WAN(総合行政ネットワーク)-ASPサービスとして、「リモートデスクトップ for LGWAN」「box for LGWAN」を提供しているが、今後は電子契約や住民リレーション管理、AI-OCR、文書管理のほか、防災BIツールなどもリリースする予定だという。