パーソル総合研究所が7月21日に発表した調査結果によると、デジタル領域のリスキリング(新しい知識やスキルを学ぶこと)促進においては、キャリアへの展望が影響する度合が強いことがわかった。
同調査は同社が5月13日~16日にかけて、全国の20~59歳の男女正社員3000人を対象に実施したもの。
リスキリングの詳細を尋ねたところ、新しいツールやスキル、知らない領域の知識などを学ぶ「一般的なリスキリング経験」のある人は3割前後、デジタル領域の新しい技術やデータ分析スキルなどを学ぶ「デジタル・リスキリング経験」のある人は2割程度だった。
日頃から知らない領域の知識を新たに学び続けたり、専門性を広げ続けたりしている「リスキリング習慣」がある人は3割弱という結果だ。
業種・職種・性年代別の傾向を見ると、リスキリングが盛んな業種は、情報通信業、教育・学習支援業、金融業・保険業だった。
職種別ではIT系技術職、経営・経営企画職、営業推進・営業企画職、商品開発・研究職、企画・マーケティング職でリスキリングが盛んであり、性年代別では40~50代の女性にリスキリングの経験も習慣も大きく減少する傾向が見られる。
リスキリングを促進する人事制度や人事管理のあり方を同社が分析したところ、一般的なリスキリングには目標の透明性が、デジタル・リスキリングにはキャリアの透明性が、それぞれ最もポジティブに影響しているという。処遇の透明性は、どちらのリスキリングにもポジティブな影響が見られるとのこと。
また会社都合の異動の多さは、一般的なリスキリングに対してネガティブに影響するという。
上司マネジメントのあり方に目を転じると、デジタル・リスキリングでは、一般的なリスキリングと同様に探索行動が影響しているほか、今後の自分のキャリアを相談できるといったキャリア支援についての上司の姿勢がよりポジティブに影響するとしている。
リスキリングの阻害要因を同社が分析したところ、「変化抑制意識」が高いほどリスキリングをしない傾向にあることが分かった。
変化抑制意識とは、所属する組織の中で業務上の変化を起こすことに対して大きな負荷(コスト)を予想し、現状維持を選ぶ心理のことといい、こうした変化を嫌がる意識を発生させない組織風土作りが重要だと同社は指摘している。
リスキリングを支える学びの1つとして、同社は「アンラーニング」を抽出した。アンラーニングとは、これまでの仕事に関わる知識やスキル、考え方を捨て、新しいものに変えていくことと同社は定義する。アンラーニングを頻繁に行っている人の方が、リスキリングも多く経験しているとのことだ。
役職滞留年数とアンラーニングの関係を見ると、役職に就いて3カ月~半年未満でアンラーニングはピークに達し、その後減っていく傾向が見られた。また、人事評価については、5段階中4の評価を受けている就業者が最もアンラーニングが低いとのことだった。