西日本電信電話(以下、NTT西日本)は6月29日、6月17日付で同社の代表取締役社長 社長執行役員に森林正彰氏が就任したとして、記者会見を開いた。
森林氏は1984年に北海道大学工学部を卒業し、日本電信電話(NTT)へ入社。その後、NTT Com AsiaのCEOやNTT EUROPEの代表取締役社長などを歴任しており、海外経験も豊富な点が同氏の経歴の特徴だ。2018年からはNTTの代表取締役副社長を務めている。
記者会見で同氏が示した経営方針は「伝新人輪(でんしんじんわ)」。社名である電信電話に掛けた造語だ。同社の伝統を守りながら、人と輪を広げ、新たな挑戦をしていくという意思から、これらの4文字を選んだという。
「伝」の字には、伝統を守る方針のほかに、同社の主事業である電話やICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)基盤としての光サービスなど情報を「伝える」使命を今後も果たしていく方針も込めているとのこと。また、技術も伝承しながら高品質な情報通信インフラを整備していくとしている。
「新」の字は同社の新たな挑戦を表している。特に、グローバル化に注力するという。森林氏は同社グループ企業で電子書籍配信サービス「コミックシーモア」を展開するNTTソルマーレを紹介し、「日本だけでのサービス展開はもったいないので、グローバル展開など、ビジネス拡大の可能性を模索していく」と述べた。
さらに、「通信とは異なる分野で新たなビジネスに挑戦し、大きな成長をすることが当社の今後のテーマ。第2、第3のソルマーレを生み出すことが私の使命でもあると思っている」とも語った。
また、同社には、新たなビジネスの場づくりにも貢献する狙いがある。2022年3月にオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE」(大阪府大阪市)を開設した同社は、ベンチャー企業や大学などと共創型のビジネスを促し、新技術を社会に実装していくとのことだ。
「人」の字は人を大切にするという方針を表す。社員だけでなく、顧客やユーザー、地域コミュニティとのつながりを重視する方針だ。社員に向けては、リスキリングの機会などを提供し高度なスキルを持つ人材の育成を進める。また、ダイバーシティの観点から多様な人材をタイムリーに採用していくという。
これまでにNTT西日本は「地域のビタミン活動」と称して、ICT基盤を活用しながら地域住民と共に地方創生に取り組んでいる。同社が担当する30府県で自治体などを交えながら地域課題の解決を進めており、これまでに36プロジェクトが発足している。地域コミュニティとの連携強化を図るため、こうした取り組みは今後さらに注力していくようだ。
「輪」はパートナーとの共創の輪を広げ、企業や自治体、大学など各地域とのオープンな連携を進める方針を表す。森林氏は「DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を目指す場を提供し、結果的に大輪の花を咲かせられたら」とコメントしていた。
森林氏は「伝新人輪」の経営方針の下で、NTT西日本の屋台骨となる情報通信インフラを安定的かつ高品質につなぐとしている。また、地域課題解決の先駆者として、地域やパートナーとのつながりにより地方創生を実現するとのことだ。同氏は2022年度には3年連続の増収増益を目指すとも述べていた。