セキュリティリスクを回避したいIT部門と、売上や業務効率を重視するユーザー部門の対立は、誰にとっても身近でよく聞く話題だろう。しかし両者は本来、同じ方向を向いてビジネスを進めていく大切な仲間である。では、IT部門はどんな風に仲間に、業務に向かい合っていくべきか。

6月14日に開催されたセミナー「IT部門のプロジェクト管理 Day 2022 Jun. プロジェクトを成功に導く勘所」に圓窓 代表取締役の澤円氏が登壇。「これからの時代を生き抜くために必要なIT部門のマインドセット」と題し、講演を行った。

  • 圓窓 代表取締役の澤円氏

全ての企業がテクノロジーカンパニーになる時代の到来

澤氏は冒頭、現代を「人間がデータを信じる生き物に進化した時代」だと定義した。

人々はECサイトで買い物をすることが当たり前になっている。ただ、これは実際の買い物ではない。購入ボタンを押すだけでは実際の品物は手に入らないが、我々はサイト上のコンテンツ情報を信じて、クレジットカード番号の入力をする。誰もがデータを信じているからこそ成立する“買い物”である。

また、かつて米国で行われたアポロ計画では、さまざまなデータを分析、シミュレーションをすることで、実際にロケットを飛ばし、月への往復を成功させた。データを信じたからこそ達成できた偉業である。このような経験を経て、人類は「データを信じることがプラスになる」と学んできたのだ。

世界におけるデータの発生・取扱量は年々増加し、「『データになっていなければ、この世に存在しない』と言っても過言ではない世界に我々は生きています」と澤氏は語る。企業も当然、テクノロジーと無縁ではいられない。

「全ての企業はテクノロジーカンパニーになっていくでしょう。テクノロジーと距離を取ることは、経営活動にネガティブなインパクトを与えるとも言えます。データは企業の血液のようなものであり、データを信用できなければ、ビジネスは成立しません」(澤氏)

データ時代のセキュリティリスクとは?

そんな時代だからこそ、セキュリティに気を配ることが一層重要になってくる。澤氏はここで身近な例として、業務での個人LINEの使用を挙げ、「(セキュリティの観点からすると)オフィスの中と外の境界が急激に曖昧になった」と指摘。さらに、コロナ禍によりリモートワークが普及したことで、個人レベルのITリテラシーが業務に連動する時代になり、「ゼロトラストの考え方が基本となる時代が到来している」と、力を込める。

ただし、ゼロトラストの概念が社内に向いてしまうと、分断が生まれる。同じ社内にあるにも関わらず、他部門を信用しない姿勢が社内に不協和音を生み出す可能性があるのだ。

その一例が、IT部門とユーザー部門の間でよく起こる“戦い”だ。セキュリティリスクを懸念するIT部門側はPCの持ち出し禁止やUSBメモリの使用禁止といったルールでリスクを回避しようとする。一方のユーザー部門はルールがもたらす不便さに不満を募らせ、生産性が下がることに危機感を覚える。両者の主張は平行線をたどる一方だが、どちらも“組織に貢献したい”という気持ちから発生している主張であり、どちらが正解というものではないのだ。澤氏はこの問題の根本的な原因は「ユーザーのITリテラシーに依存しすぎること」だとし、「運用でカバーする場合、人がどこかで無理を強いられる可能性が高い」と指摘する。IT部門にとって、ユーザー部門は本来、対立する相手ではなく、協働してビジネスを進めていく仲間だ。では、どのようにすれば、力を合わせてより良い方向へ導いていけるのだろうか。