F NECは2022年6月9日、5G(第5世代移動通信システム)をはじめとしたネットワーク技術の検証や、本格導入に向けたビジネスモデル検証などを行える実証施設「NEC CONNECT 5G Lab」を同社の玉川事業場内に開設した。同日には、メディア向けの発表会が開かれ、施設の目指す方向性やコンセプトが紹介された。

  • 「NEC CONNECT 5G Lab」

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異業種やプラットフォーム提供企業とオープンイノベーション

NEC CONNECT 5G Labは、2020年3月に設立された「NEC ローカル5Gラボ」をリニューアルした施設だ。NEC ローカル5Gラボは、従来、ローカル5Gの技術検証やNECの5Gソリューションの体験を企業・自治体とNECが1対1で行う場だった。

これまで、同施設では159件の訪問があり、57件の実証実験が行われてきたが、「5Gのユースケースを創出して広く社会に実装していくためには、さまざまなアセットを持つ多くの企業と連携してオープンイノベーションを進めることが重要」とNECは考え、今回、「NEC CONNECT」を新たなコンセプトに、「ネットワークを活用したオープンな共創の場」として施設をリニューアルした。

  • 新コンセプト「NEC CONNECT」で目指す共創活動の全体像

NEC ネットワークサービスビジネスユニット 新事業推進部門 部門長の新井智也氏は、「NEC CONNECTでは、今と未来、人と人、構想と実装をつなぐことを目的としている。 各業界のリーディング企業や最先端テクノロジーを有する企業・団体などとパートナーシップを形成し、アイデア創出、技術と社会受容性の検証、社会実装のサイクルを回していくことで、共感の輪を広げながら2030年に向けてさらなるイノベーションを創出したい」とコンセプトのねらいを解説した。

  • NEC ネットワークサービスビジネスユニット 新事業推進部門 部門長 新井智也氏

すでに業種、ソリューション、プラットフォーム、ネットワーク・デバイスと、複数領域の企業50社が「NEC CONNECT」のパートナーとして参画しており、今後、NEC CONNECT 5G Labでネットワークの課題解決や5Gの実利用に向けたオープンイノベーションに取り組む。

  • 「NEC CONNECT」のパートナー企業。今後も継続的にパートナーを募集するという

また、ネットワーク技術を活用した共創の場づくりの一環として、NECは今後、千葉県我孫子市にある「Cloud Robotics Center」をアップデートするほか、Beyond5GやIOWN(Innovative Optical and Wireless Network、アイオン)の実証施設の整備・拡張なども進めるという。

実証環境を拡充し、sXGPやLPWAも併せて検証可能に

NEC CONNECT 5G Labでは、Sub6の屋外実証やミリ波などローカル5Gの実証環境が拡充した。これに加えて、キャリア5G、Wi-Fi、LTE、sXGP(プライベートLTE)、LPWA(Low Power Wide Area)といった、5G以外のネットワークの実証環境も用意された。ネットワークにつながるプラットフォームも、エッジコンピューティングやパブリッククラウドなど、用途やニーズに応じて使い分けることができる。

  • 「NEC CONNECT 5G Lab」の実証環境

同施設の利用企業は、サーバなどの機材を自社で用意することなく、自社のアプリやデバイス、サービスに合わせた環境を選択して各種ネットワークの実証が可能だ。なお、同施設および実証環境は無償で公開されており、スタッフの24時間監視などの特別な技術サポートやNECが提供する個別サービスの利用などは有償となる。

また、5G端末やRU(Radio Unit)、CU/DU(Central Unit/Distributed Unit)などの基地局、RUとCU/DUの一体型基地局など、ローカル5Gの関連機器も展示されているので、大きさや設置例を参考にすることができる。

  • 「NEC CONNECT 5G Lab」でのローカル5G機器の構成

  • CU/DUとUPFは防音のラックに設置されている

  • プライベートLTE用のsXGP基地局も設置されている

  • 4K映像をローカル5G、Wi-Fi、LTEの各通信方式で流し、リアルタイムで画質の差を比較する映像展示もある。Wi-Fiは電波干渉を受けやすいため映像が崩れることも。LTEよりもローカル5Gのほうが、レンガの壁がよりクリアに描出される

今回のメディア向け発表会では、パートナー企業との共創活動の一例として、AWS(Amazon Web Services)のクラウド・エッジサービスとNECの5Gネットワーク、aptpodのIoT基盤を組み合わせた「低遅延のロボット遠隔制御ソリューション」のデモが行われた。

ロボットの操縦者は、ロボットに取り付けられたカメラ越しに状況を確認し、コントローラーでロボットを操作する。コントローラからの信号はAWSのクラウド基盤で制御され、ロボットに信号が送られる仕組みで、ネットワークにローカル5Gが利用された。

このほか、ブルーイノベーションとの共創活動としてドローンの自律飛行による配管の錆の検知・撮影や、Cloud Robotics Centerと連携した遠隔地での重機操縦のデモなども行われた。

ビジネスデザイナーが伴走して実証から本格導入まで支援

NEC CONNECT 5G Labでは、5Gの実証から本格導入までを支援するプロセスを「課題理解」「課題定義」「価値・施策設計」「検証・ブラッシュアップ」と再定義し、各フェーズに合わせたメニューを整備し直した。

加えて、潜在的な課題を抽出し、ネットワーク技術の効果的な実証から課題解決までをトータルにサポートできるよう、NECのスタッフが「ビジネスデザイナー」として各フェーズで伴走・支援する体制となった。例えば、課題の理解・定義のフェーズではNECのコンサルタントがアドバイザーとして関わり、技術の検証では技術的なノウハウ有したエンジニアがサポートに入る。

  • 「NEC CONNECT 5G Lab」では新たに「ビジネスデザイナー」が5Gなどの実証をサポートする

NEC ネットワークサービスビジネスユニット 新事業推進部門 バーティカルサービス開発統括部 統括部長の藤村広祐氏は、「ビジネスデザイナーは施設の利用企業・パートナーの潜在課題の掘り起こしを行い、課題解決の方向性を整理したうえで、技術検証を支援する。課題解決に必要となるアジャイル開発によるプロトタイプの製作や、上位アプリの検討、ビジネスモデル検証などを通じて、5Gの本格導入に向けたユースケースの深化・拡大を進めていきたい」と語った。

  • NEC ネットワークサービスビジネスユニット 新事業推進部門 バーティカルサービス開発統括部 統括部長 藤村広祐氏