パナソニックホールディングス(パナソニックHD)は6月7日、同社が展開しているAI(人工知能)エッジプラットフォーム「Vieureka(ビューレカ)」を提供する新会社「Vieureka株式会社」を設立することを発表した。

資本金は4億5500万円になる見込みで、パナソニックHD、ドライブレコーダー事業を展開するJCVケンウッド、米ベンチャーキャピタルのWiLの3社が新会社に約3分の1ずつ共同で出資する。代表取締役にパナソニックホールディングス 技術部門 事業開発室 エッジコンピューティングPFプロジェクト 総括担当の宮﨑秋弘氏が就任する。従業員19名を抱えて7月1日より営業を開始する。

同日開催された記者会見に登壇した宮﨑氏は「人に代わって働くエッジAIの社会実装を加速するとともに、グローバルでの社会インフラ構築を目指す」と意気込みを見せた。

  • Vieureka 代表取締役の宮﨑秋弘氏(パナソニックホールディングス 技術部門 事業開発室 エッジコンピューティングPFプロジェクト 総括担当)

    Vieureka 代表取締役の宮﨑秋弘氏(パナソニックホールディングス 技術部門 事業開発室 エッジコンピューティングPFプロジェクト 総括担当)

すべてのデータをクラウドに送信し、クラウドでAI処理を行うクラウドAIに対して、エッジAIとは、IoT機器やセンサーなどの端末に高性能なエンジンを搭載し、端末がAI処理を行う技術のことを指す。端末で収集したデータを基に端末内でAI処理をし、必要なデータだけを抽出しクラウド側に送信する仕組みだ。

  • エッジAIとは、IoT機器やセンサーなどの端末に高性能なエンジンを搭載し、端末がAI処理を行う

    エッジAIはIoT機器やセンサーなどの端末に高性能なエンジンを搭載し、端末がAI処理を行う

エッジAIは端末側でAI処理を行うため、その場で指示・アラートができリアルタイムな判断ができ、個人情報などを端末の外に出さないためプライバシーの担保ができる点が特徴だ。また、端末側でAI処理したのちに必要なデータのみをクラウドへ送信するため、通信コストを約1000分の1~1万分の1まで削減できるという。

  • エッジAIの特徴

    エッジAIの特徴

インドのAstute Analyticaの調査によると、エッジAI市場は2027年までに80億ドル(約1兆618億2000万円)超へと成長する見込み。宮﨑氏は、「エッジAIを活用することで、現場で行っていた『人による作業』の置き換えが可能になる」と同技術のメリットを説明した。

一方でエッジAIには、開発・導入・運用のハードルが高いといったデメリットがある。開発するにはAIや通信、クラウドといった幅広い専門技術が求められ、導入するための現場作業も難しい。死活監視や不具合対応など運用のハードルも高い。エッジAIを店舗や工場、病院などの多種多様な社会実装するにはこれらのハードルを下げる必要がある。「これらの仕組みがないと、エッジAIがPoC(実証実験)止まりとなり、社会実装との間にある『死の谷』を超えられなくなる」(宮﨑氏)

そこで新会社のVieurekaでは、エッジAIの開発・導入・運用を簡易にするプラットフォーム、また同プラットフォームを活用したソリューションを展開していく。同社のエッジAI、ソフトウェア開発キット、エッジAI遠隔マネジメントを提供すると同時に、60社を超える共創パートナーが持つソリューションやハードウェアも組み合わせて展開していく。

  • Vieurekaは共創パートナーとともに社会実装を推進していく

    Vieurekaは共創パートナーとともに社会実装を推進していく

例えば、VieurekaのエッジAIカメラとパートナー企業の異常検知ソリューションを組みわせることで、製造現場における現場作業員の不良品検知作業を省力化したり、介護業務支援サービスと連携して介護士の遠隔からの見守りを実現させることで、夜間巡視業務を削減したりする。

同社は今後、グローバルも見据えてソリューションの展開を加速させ、2030年までに100億円の売上を目指す。

「私は10年間エッジAIの事業について考えてきた。今後の社会において、エッジAIという技術が必要不可欠な存在になると確信している」(宮﨑氏)