アドビは6月1日、説明会を開催し、DXインターナショナルマーケティング本部の祖谷考克氏が、「デジタル社会における企業の信頼性に関するグローバル調査」の結果を発表した。

  • アドビ DXインターナショナルマーケティング本部執行役員本部長 祖谷考克氏

対面体験よりも求められるデジタル体験

今回の調査は、企業と消費者の信頼関係を築く方法を明らかにすることを目的に行われたもので、調査対象は欧州、アジア太平洋地域を中心にした世界15カ国の1万2,000人以上の消費者と従業員が50人以上の企業のシニアビジネスリーダー2,000人。

パンデミック以降、コロナ禍で起きた顧客体験の変化が企業全体に影響を及ぼしており、課題として最も挙がったのは「顧客からのデータ共有」(34%)だったという。信頼関係が構築できないと顧客データは獲得できず、また「他者への推薦(口コミ)」や「競合比較」といった売上に直結する部分でも課題が浮き彫りになっている。

また企業のデジタル体験に関しての質問では、「ミレニアル世代」や「ジェネレーションX」では、デジタル体験が対面での体験を上回る結果になったという。唯一デジタル体験よりも対面での体験を重視したのは、1997年生まれ以降の世代であるZ世代のみだった。

  • 企業のデジタル体験は、対面と比較してどの程度重要ですか? 引用:デジタル社会における企業の信頼性に関するグローバル調査

この結果に対して祖谷氏は、「コロナ禍で対面での活動に最も甚大な影響を受けたのがZ世代だったことが要因にあるのではないかと考えている」との考察を示した。

企業にデータが盗まれることを懸念している人は86% 日本がグローバルで最も多い結果に

企業の信頼度と利益の関係についての調査では、信頼する企業に対しては6割以上が年間1,000ドル以上支払うとしているほか、4割超の消費者が「信用が1度失われれば二度と利用しない」と回答しており、信頼と購買行動が直結している様子がうかがえる。

  • 次の文章にどの程度同意しますか?「一度、企業が信頼に反する行為を行ったら、私は二度とその会社を利用しない」 引用:デジタル社会における企業の信頼性に関するグローバル調査

中でも、信頼に関わる項目として、「データの安全性」が損なわれると「購買の中止」につながることが判明しているといい、データ漏洩や許可のない個人情報の利用に対して信頼が損なわれる可能性が高いと回答する人が最も多い結果になったという。

データの安全性については、顧客と企業側で大きな認識の差があることも分かっており、92%の企業の経営層が「データの安全性を維持している」と回答したのに対して、75%の顧客が「企業が自分のデータをどのように利用しているかに懸念がある」と回答したことが明らかになった。

特に日本の消費者は個人情報の管理に懸念を感じており、最も多かった回答は「承認されずにデータが利用されること(86%)」。加えて、「データを盗まれること(86%) 」と回答した割合はグローバルで最も高い結果になっているという。

以上の調査を踏まえ、祖谷氏は「今回の調査では『信頼は企業の業績に直結する』『データの取り扱いについて企業と消費者との間に認識の差』『安全で透明性のあるデータ活用とパーソナライゼーションが重要』という3つの点が明らかになりました」と語っていた。