数多くのお菓子のヒットをとばす、製菓のリードカンパニーであるカルビー。カルビーは、コンテンツプラットフォーム「note」を活用して、「ファン」とつながるための情報発信を行っている。同社の取り組みの特色はどのようなものなのだろうか。そこで今回、「note」の運用を担っている広報部の川瀬雅也氏と櫛引亮氏に話を聞いた。
伝えたいのは 「カルビーの新しい一面」
「かっぱえびせん」「じゃがりこ」「Jagabee」――これらはすべてカルビーのお菓子であり、スーパーやコンビニエンスストアのお菓子コーナーで見ない日はないほどのヒット商品である。
しかし、皆さんはこれらの商品がどんな人によって開発され、そこにどんな想いが詰まっているのかを考えたことがあるだろうか?
「カルビーと聞いてお客さまが想像するのは『ポテトチップス』や『じゃがりこ』『フルグラ』などの商品名です。商品名であるポテトチップス一つをとっても、そこには原料であるじゃがいもへのこだわりや社員の想いなどが詰まっています。しかし、それを皆様に伝えたくても、キャンペーンやプレスリリースではどうしても新商品の情報提供が多くなってしまう。そこでカルビーの歴史やこだわり、商品の裏側にあるストーリーを伝える手段を探していました」
そう語る櫛引氏は、自分自身、中途でカルビーに入社するまで、商品名や味は知っていても、商品が作られるまでの過程やこだわり、想いに触れる機会が少なかったという。
そんな想いを受けて導入された「note」では、公式アカウント「THE CALBEE」の名称の由来、同社の歴史や開発秘話、社員の想いなど、より親しみを持てるようなストーリーが語られている。
ところで、「note」とは、クリエイターが文章やマンガ、写真、音声を投稿することができ、また、ユーザーはそのコンテンツを楽しんで応援できるメディアプラットフォームだ。だれもが創作を楽しんで行うことができるサービスとなっている。
カルビーの「note」の公式アカウント「THE CALBEE」の企画のうち、新しいところでは「プロ野球チップスカード復刻会議」や新卒採用活動に合わせて始まった連載の「NEXT is NOW」などが注目を集めたという。
その人だからこそ伝えられるストーリーを読者に
川瀬氏は、「note」の企画を考える際に大切なこととして、「カルビーが伝えたい内容」「読者が読みたい内容」の両面を持ち合わせていることだと語った。
「通常、自分の担当ブランドから新しい話題を選んでしまいがちです。しかし、『その話を読者は本当に求めているのか?』『読者はこれを読んで面白いと思うのか?』ということをきちんと考え、『その人だからこそ伝えられる内容』を読者に届けることが大切です」(川瀬氏)
先ほど挙げた「プロ野球チップスカード復刻会議」と「NEXT is NOW」もそんな想いを軸にした企画だ。
「プロ野球チップスカード復刻会議」は3月30日に開催された企画で、プロ野球チップスの商品制作を担当した三井剛氏が登壇し、歴史や開発の苦労、裏話を語るというものだった。さらに、参加者と一緒に復刻したい「プロ野球チップス」のカードを語り合うというパートも用意され、盛り上がりを見せたという。
「NEXT is NOW」は、2023年卒の採用活動を前に連載がスタートしたもので、“次の時代を担うのはあなた”という意味合いを込めた企画だ。現場で活躍しているさまざまな社歴や職種の人財を紹介する内容で、今回は5人の若手社員のインタビューが掲載されている。
筆者が今回のインタビューに伺った日は、カルビーの面接が行われていたそうで、「面接に来てくれた方もこの『note』の記事を読んで仕事への理解が深まっていたと人事担当から聞きました」と櫛引氏は顔をほころばせていた。
会社として伝えたいことを優先し、売り上げなどの数値目標を達成することが最優先課題になってしまいがちなマーケティング活動。しかし、櫛引氏が「note」を導入した意図はマーケティングで目指すものとは異なるという。
「『note』活用の目的は、ファンの方々により親近感を持ってもらうことです。目に見える短期的ないいね数やフォロワー数を増やすのではなく、丁寧に、着実に思いやこだわりがこもったストーリーを伝えていくことが価値になると信じています。結果的に商品をより楽しんでもらえるようになると思います。また、カルビーのロングセラー商品の開発秘話や企業活動の歴史やエピソードを残す、というのも私たちの使命です」(櫛引氏)
「これまでのカルビー」と「これからのカルビー」を伝える
両者は、現在の「note」を活用した企画について「社員からの評判が回を重ねるごとに良くなっている」とした上で、1年目だった昨年はまだできていないことがたくさんあったと述べていた。
第2ステップとなる、導入2年目の今年は、「noteのクリエイターやカルビーのファンとの交流」を大切にしていきたいという。
「多くの社員が読んでくれているのはモチベーションになります。経営層でも『note』を読んだと声を掛けてくださることもあります」(川瀬氏)
今後は、noteを使用している法人向けのオンラインイベントで他社と交流したり、読者を巻き込んだ企画を考えて交流したりと、さまざまな人との関わりから個人の成長にもつなげていきたいという。
両者は今後の抱負として、次のように語っていた。
「社内外の方々と一緒に作っていけるメディアにしていきたいです。読者の方々からいただいたご意見をいかし、カルビーの新しい一面をお伝えできるように尽力します」(櫛引氏)
「カルビーのこれまでとこれからを伝えていきたいです。また今後、こんな商品のストーリーが読みたい!といった意見なども気軽に寄せていただきたいです」(川瀬氏)
今年度、「note」を導入して2年目になるカルビー。開発者がお菓子に熱い想いをかけているように、カルビー広報部が熱い想いをかける「THE CALBEE」のさらなる発展から目が離せない。