属人化やマーケティングチームとの連携など、成長のフェーズによりさまざまな課題に直面する営業組織。立ち上がり後約3年で売上約33倍に成長したノバセルでも、これまでに多くの課題を乗り越えてきたという。同社 グロースパートナー事業部 マネージャー 立花一雲氏は、4月21日に開催されたTECH+セミナー「セールステックDay 2022 Apr. お客様を主語にセールスをアップデート」で、その具体的なエピソードや解決方法について明かした。
ノバセルが感じた事業立ち上げ期の“成長痛”
ノバセルは、印刷サービスなどを手掛けるラクスルが集客事業の中で手掛けていたテレビCMサービスを事業部化するかたちで立ち上がった。会社設立は2022年2月だが、サービス自体の開始は2018年。2020年にノバセルとして事業部化した。親会社のラクスルを急激に伸ばしてきたマーケティング手法およびノウハウを他の事業会社へ提供すべく、現在では、運用型テレビCMのほか、戦略立案・リサーチ、Web広告といった領域でサービスを展開する。営業組織は、代表も含めた4名体制からスタートし、現在は7名のメンバーが活躍している。
サービス立ち上がり後3年半が経過し、売上は約33倍に成長した。B2B領域の新規事業としては順調に伸びていると言えるだろう。しかしながら、立花氏はここに至るまでに多くの課題もあったと振り返る。
「1つは、営業組織における知見・ノウハウの属人化です。B2B事業の立ち上がりで起こりやすい問題ですが、ハイパフォーマーとローパフォーマーに差が出てしまい、メンバーが一定のレベルでないと数字がつくれないという議論が生じていました。また、コロナ禍による業務のオンライン化に伴いコミュニケーションが希薄化したことで、マネジメント層や現場の中で齟齬が発生していました」(立花氏)
さらに、売上管理にスプレッドシートを利用していることも問題となっていた。「売上単価が大きく金額の振れ幅が多い中で、スプレッドシートによるレベルの高くない管理が行われており、バックオフィスチームからは悲鳴が上がっていた」と、立花氏は当時の状況について打ち明ける。
一度目の「THE MODEL」導入が失敗に終わってしまった理由
そこでノバセルでは、近年注目されている営業プロセスモデル「THE MODEL」の導入を決意する。しかし、立花氏によると、一度目のトライアルは「大失敗に終わった」という。現状を整理し、目指すべき状態を言葉に落とし込み、Salesforceを導入して売上推移やパイプラインを可視化することはできたものの、仕組みが機能せず、3カ月後には自然とスプレッドシートによる管理に戻ってしまったのだ。この失敗には、大きく分けて3つの理由があったと立花氏は考察する。
1つ目の失敗理由は、なぜやるのか(=WHY)が、プロジェクトオーナーをはじめリードすべきメンバーの中で腹落ちしていなかったこと。当然、現場のメンバーにも浸透できなかった。
「活動が数値で可視化されると、現場が疑心暗鬼になってしまう恐れもあります。マネジメント側の導入目的だけではなく、現場のメンバーにまで腹落ちしてもらえるストーリーが重要です。THE MODELは、現場のパフォーマンスに対して、適切な評価やアドバイスをするためのものでなくてはなりません。個人のパフォーマンス向上や報酬につながるというストーリーを描いてあげると、現場のメンバーにもポジティブに思ってもらえます」(立花氏)
2つ目は、顧客価値を定義できていなかったこと。自社の営業活動の管理のしやすさや効率化に気を取られてしまいがちだが、それが顧客にとっての価値、ひいてはビジネスにどうつながるかといった議論が不足していた。
「THE MODELで営業活動を管理する一番の目的は、適切なお客さまに適切なタイミングでアプローチし、価値を提供すること。THE MODELを導入することが、どのような顧客価値を生み出すのかまで考えなければなりません」(立花氏)
3つ目は、システム開発に詳しい人をリーダーに据えたこと。Salesforceの機能活用など“点”での話は進んでいたが、事業全体の理解度や業務の解像度が低かったため、リードタイムなど実際の現場感覚が考慮されていないものになってしまっていた。
「自分たちの事業モデルに合わせた管理にしなければTHE MODELは機能しないため、業務の解像度が高い人をアサインした方が良いでしょう。システムに詳しい人もプロジェクトに不可欠ですが、システムありきでなく、あくまで目的を先に置くべきです」(立花氏)
数カ月後、マーケティングとの連動や予実管理の必要性が高まったため、これらの失敗理由を踏まえた上で再度THE MODEL導入を試みたところ、上手く進んだという。