パナソニック インダストリーは5月20日、同社と東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻、九州大学大学院総合理工学府、名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻の研究グループが、生体呼気から得られる化学情報に基づく個人認証の原理実証に成功したと発表した。

  • 呼気センシングによる個人認証のイメージ

同研究では、16種類の高分子材料と導電性カーボンナノ粒子で構成する人工嗅覚センサーにより呼気センシングを行い、得られたデータ群を人工知能による機械学習を通して分析することで、20人の個人認証を97%以上の高精度で達成したという。

従来の物理情報による方法と比べて、膨大な種類の呼気分子群を通して得られる化学情報を利用する提案方法は、情報の偽造や窃取した情報による長期的ななりすましが極めて困難であり、高いセキュリティの生体認証技術の実現が期待できるとしている。

  • 実験の様子と使用した人工嗅覚センサー

  • 国籍・性別・年齢が異なる6人の呼気センシングで得たセンサー応答マップと個人識別の特徴量マップ

呼気センシングによる個人認証の原理実証は、人工嗅覚センサーにより得たセンシング・データに対してニューラル・ネットワーク・モデルに基づく機械学習を適用して行った。

6人を対象に行った個人認証の実証実験では、平均97.8%の精度で個人の識別に成功したという。97%以上という識別精度は、別の日に呼気をサンプリングした場合や対象人数を20人に増やした場合の実証実験でも同様に達成したとのこと。

同研究では呼気センシングによる個人認証の原理実証に成功したが、同技術の実用化に向けては、さらなる多人数を対象とする実証実験や摂食が及ぼす認証精度への影響など多くの課題が残されているとのこと。

今回得た知見に基づいて人工嗅覚センサーのチャンネル数を増やすとともに人工嗅覚センサーのパフォーマンス向上を図ることで、これらの課題を克服でき、高いセキュリティの生体認証技術の実現につながることが期待できるという。

研究グループの主なメンバーは、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻の長島一樹准教授と柳田剛教授、九州大学大学院総合理工学府のジラヨパット・チャイヤナ大学院生(研究当時)、名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻の安井隆雄准教授と馬場嘉信教授、パナソニック インダストリー技術本部の花井陽介主任技師、中尾厚夫主任技師、中谷将也課長。