桜が散ってしまい春の終わりを感じて少し寂しい気持ちになるかと思ったが、見上げてみると鮮やかな緑が萌え始めていることに気づき、四季がある日本に生まれて良かったと感じる今日このごろ。

国土の約7割は森林に覆われており、世界から見ても日本は緑豊かな国なのである。身近にある緑、すなわち木などの植物は私たちの生活に欠かせない存在としてあらゆる場面で利用されてきた。そして近年、日本では利用期を迎えた人工林の増加に伴い、伐採活動が盛んだ。

そこで今回は、衛星画像を用いて日本全域の過去35年間の伐採箇所をマッピングすることで伐採の場所と時期、その後の植栽状況を明らかにした森林総合研究所(森林総研)の研究を紹介したい。

詳細は「International Journal of Applied Earth Observation and Geoinformation」誌の104巻(2021年12月)に掲載されている。

伐採がいつどこで行われ伐採後に植栽されたかという情報は、森林所有者の自己申告による伐採造林届などによって把握されているものの、自己申告による情報のみではこれらの状況について完全にはわかっていなかった。

森林総研はLandsatの衛星画像を利用して、1985年から2019年までに伐採活動(ここでは皆伐とみなす)とその他の森林攪乱(土地転用・間伐・自然攪乱)があった箇所を毎年推定するモデルを開発した。

日本全域を対象に30m解像度でマッピングし、さらに伐採前後の植生を分類して針葉樹林の伐採後に再び針葉樹林となった箇所は人工林として再植栽されたとみなし植栽面積を調べた。

  • 日本全域の伐採および森林攪乱のマップと代表的地域の例示

    日本全域の伐採および森林攪乱のマップと代表的地域の例示(出典:森林総研)

研究の結果、以下について明らかになった。

  • 日本全域の伐採面積は2010年以降、年間約4万haから6万haへと増加傾向にある
  • 針葉樹人工林として再植栽されたと考えられる割合は1980年代から減少傾向だったが、2010年以降は約5-6割でほぼ横ばいだった

政府の統計値と比較すると、針葉樹の推定再植栽面積はほぼ一致したが、伐採面積は統計値よりも過少に推定された。

  • 全国の伐採およびその他の森林攪乱の推定面積の推移(出典:森林総研)

    全国の伐採およびその他の森林攪乱の推定面積の推移(出典:森林総研)

  • 針葉樹林の伐採後に針葉樹が再植栽された割合の推移

    針葉樹林の伐採後に針葉樹が再植栽された割合の推移(出典:森林総研)

この研究での針葉樹林伐採後の再植栽割合の定義には広葉樹の伐採と植栽面積が含まれていない。広葉樹林伐採後に植栽されることが少ないことを考慮した場合、針葉樹・広葉樹ともに含む伐採に対する植栽面積の割合はこの研究の値よりも低い可能性がある、また、伐採後少なくとも4~5割程度は針葉樹人工林として植栽されていないと考えられるとした。

各地域での伐採・再植栽の状況がより迅速・正確に把握されることで森林資源利用の現状に即した森林の管理計画策定に利用されることが期待される。

今回作成された伐採およびその他森林攪乱の箇所を示すマップはオンラインで公開されている。

近年いろいろな場面でデジタル化が進んで便利になっていく中、こういった研究が活用・発展されることで今後、林業分野にどのような変化をもたらすのか楽しみである。