2022年から業種別の事業体制を敷くServiceNow Japanは、製造業向けのソリューションの展開を進めている。4月20日には、同社が提供するソリューションを紹介するメディア向けの説明会が開かれた。活用事例と併せて紹介したい。
ステークホルダーの業務アクションをデジタルフローに乗せる
ある製品が最終消費者に届くまでには、さまざまなステークホルダーが介在する。企業内だけ見ても購買、生産、販売・営業、会計、ITなど関連する部門は多岐にわたり、社外には販売代理店、サプライヤー、物流事業者などのサプライチェーンが存在する。
製造業が多様なステークホルダーとの関係を維持しつつ、ものづくりのグローバル化や消費行動の多様化、SDGs(持続可能な開発目標)などの新しい社会価値に対応していくためには、バリューチェーン全体の連携を実現するデジタル技術の活用が不可欠だ。
だが、サプライチェーンの各所で独立したシステムが稼働しているのが、多くの製造業の実態だ。加えて、ServiceNow Japanによれば、実作業者のユーザーエクスペリエンス低下を懸念し、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた投資も進んでいないという。
説明会に登壇したServiceNow Japan 営業事業統括 製造営業統括本部長の松本大輔氏は、「製造業の顧客からは、『データ自体はあるが次に何をすべきか判断できない』『コスト削減のために自動化をしたいがやり方がわからない』といった声を聞く。既存のERPによってSoR(Systems of Record)の実装は進んだが、DXではSoE(System of Engagement)が重要だと当社では考えており、デジタルワークフローが組織・部門、社外のステークホルダーを横断できるアプリケーションを提供している」と説明した。
ServiceNow Japanでは現在、社内外の関係者が依頼、確認、処理などの業務アクションを行える共通システム基盤を実装する「Single Systems of Action」のコンセプトの下で、製造業の実業務に適した機能を提供する5つのソリューションを展開している。
CMDBでIT・OTの統合管理が可能なマネジメント機能
「Customer Workflows」では、問い合わせや返品対応向けの機能やアフターサポートサービス向けの機能、販売代理店のサポート機能などを提供する。
例えば、ある企業では顧客から品質に関するクレームや使い方の問い合わせがあった際に、「Advanced Work Assignment」というエージェント機能でスキルや能力などを基に、対応窓口を自動的に割り振りさせている。窓口担当者は顧客へ対応しつつ、関連するバックオフィス部門とServiceNow上でデジタルに連携し、解決方法を顧客に提示することができる。バックオフィス部門は、社内システムから関連する商品のデータを参照しながら、窓口担当者に情報を連携することもできる。
「Factory Workflows」は、エンジニアリングと生産プロセスのデジタル化に役立つ各種機能のほか、OT(Operational Technology)機器の管理機能などを実装している。OT管理では、「ServiceNow Operational Technology Management」という機能でITとOTの統合管理が可能だ。
具体的には、ServiceNowがIT機器やサービス管理で利用するCMDB(構成管理データベース)でOTも管理する。CMDBクラスモデルは製造業で多く採用されているPurdueモデルを採用しており、OTネットワークで検出された機器は、CMDBにおいて「OT資産」という特殊資産としてあつかわれる。
ServiceNow Japan ソリューションコンサルティング事業統括 製造SC統括本部 統括本部長の津留崎厚徳氏は、「OT機器の所在や稼働状況に関するデータを収集し、稼働状況を可視化。OT機器のセキュリティの脆弱性を分析し、発見された際の対応や優先順位を管理する。OT機器に問題が発生した際には、技術担当者に報告し解決までのフローをデジタルで処理していく」と説明した。
サプライヤの購買管理を集約し、スマートフォンで承認も可能
「Supplier Workflows」を利用することで、サプライヤーとの間で発生するやりとり全般をデジタルに管理できる。例えば、ベンダーの登録や取引管理から品質管理、例外トラッキング、設計情報・変更情報の連携、ベンダーリスクアセスメントなどが可能だ。
説明会では、電子メールと紙の書面を用いて複数の部門間でのやりとりを通じて行っていた購買管理を、同ソリューションを用いてデジタルワークフローに集約。スマートフォンで承認依頼のやりとりを行い、承認までの時間や属人的なミスの削減につながった例が紹介された。
「Workforce Workflows」では、従業員体験を強化し、企業と従業員間のエンゲージメントや従業員間のチームワーク醸成に役立つ機能を提供する。
「人事関連、総務関連、安全衛生関連の問い合わせやリクエストを受け付けて解決まで道いたり、リモートワークをしている社員が出社する際の座席予約や会議室の予約機能、派遣社員や協力会社の業務フローの管理なども行える」と津留崎氏。
「IT & Shared Services Workflows」は、IT機器やサービスの運用管理、プロジェクト管理、セキュリティ管理を行える。また、国内だけでなくグローバル拠点も含めてシェアードサービスを利用する際に、管理機能や問い合わせ窓口を集約する「グローバル・ビジネス・サービス(GBS)」という基盤機能も提供する。
2022年3月には、同社と日立製作所とのPSIRT(Product Security Incident Response Team:製品セキュリティの対応組織)分野での協業が発表されたが、同取り組みにもIT & Shared Services Workflowsが利用されている。