ガートナージャパンは4月20日、日本のハイブリッド・ワークに関する展望を発表した。2026年までに、人や組織への対応にフォーカスしない未来の働き方への取り組みの8割以上が失敗すると同社は予測している。

2020年から続く新型コロナウイルスの感染防止対策として、日本企業ではリモートワークが普及している一方で、オフィスに戻る従業員も一部で見られるようになるなど、テレワークとオフィス・ワークのハイブリッド環境が進行している。

同社のアナリストである針生恵理氏は「今後ハイブリッド・ワークは、デジタル・ワークプレース戦略の中核として、企業戦略の重要な位置を占めるようになる。ハイブリッド・ワーク環境における働き方の取り組みでは、従来の『オフィス中心型のデザイン』ではなく、『人間中心型のデザイン』を取り入れた働き方を推進する必要がある」と指摘している。

同社によると、「人間中心型のデザイン」を推進するためには、3つの視点を持つことが重要だという。1つ目は、全従業員共通の標準環境よりも従業員個々の働きやすい環境の追求、2つ目はオフィス内の偶発的なコミュニケーションではなく意図的なコミュニケーションを促進する仕組みの構築、3つ目は目に見えるものやインプットによる評価ではなく、目に見えないものや共感ベースのマネジメントの推進だ。

一方で、オフィスやリモートワーク環境などのさまざまな場所で働くハイブリッド・ワーク環境において、従業員管理の在り方が各企業の課題となっており、成果を上げられる企業とそうでない企業が明確に分かれている。頻繁な報告の義務付け、Webカメラでの常時監視など、管理職による過剰な管理や誤った管理手法による混乱が見られているとのこと。

従業員の働き方をリアルタイムで把握するために可視化ツールを導入する場合は、監視目的ではなく、同僚や部下がどのような状況にあり、どのようにサポートできるか、どうしたらより良い働き方ができるかといった前向きな評価を行うために活用することが重要だ。同社は2025年までに、企業の40%では、パフォーマンス可視化ツールが採用されることで、従業員の生産性が落ちると予測している。

「ハイブリッド・ワークの推進においては、目に見えるものではなく、見えないものを企業としていかに評価していくかといった基準を設ける機会を創ることが重要。企業は、人や組織を含め、従業員がいかに快適に働けるかといった視点を『未来の働き方』に転換するための最重要ポイントとして取り入れていく必要がある」(針生氏)