2022年4月7日。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う最初の緊急事態宣言の発出から丁度2年が経過した。コロナ禍をきっかけにテレワークを導入した企業は大幅に増えた一方で、テレワークの導入に課題を感じた企業やテレワークの導入に至らなかった企業もあり、テレワーク制度の維持には賛否両論ある。
アステリア、サイボウズ、レノボ・ジャパン(レノボ)、ZVC JAPAN(Zoom)の4社は、「未来の働き方」をテーマにした合同調査の結果をまとめ、日本の働き方の現在地を明らかにした。4月7日に開かれた会見では4社のトップが登壇し、各社が取り組んでいるテレワークを含む柔軟な働き方や制度について紹介するとともに、今後の働き方に関する予想を発表した。
同調査によると、日本全国のテレワーク実施率(月平均で2回以上テレワーク)は、新型コロナウイルス感染症が蔓延する前は7.1%であったのに対し、2020~2021年の新型コロナ禍の緊急事態宣言中には29.5%と上昇。2022年3月現在では緊急事態宣言中に比べるとやや減少気味だが、全国の就業者の約4分の1がテレワークで働いている。
実施頻度の内訳をみてみると、コロナ禍前後で週1回未満の実施頻度の割合は半減し、その分週1回~4回のテレワーク実施頻度の割合が急増した。週5回テレワークしている「フルリモート勤務」の割合はあまり変化が見られないが、テレワーク実施者の母数が増えているため、フルリモートの就労者数は約4倍に増加した。
また企業規模別のテレワーク実施率を見てみると、従業員数300名未満の企業は17.5%であるのに対し、3,000名以上の企業は44.2%と、大企業ほどテレワークが定着していることが分かる。
変わるためには風土の改革を
「テレワーク環境に必要な機器やツールは、非常に安価に導入できるようになり、多額の資金を投資しなくてもそろえられる時代になった。『テレワークの定着』を推進できない会社には、優秀な若い人材が寄り付かなくなっている。大企業に今まで以上に優秀な人材をとられないように、中小企業こそテレワーク環境に投資すべきだ」
そう熱弁したのは、サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏。同社の従業員は自身で勤務時間、勤務場所を選ぶことが可能で、副業も自由にできる。そんな「100人100通りの働き方」を実現している同社だが、社長の青野氏は、新型コロナ禍をきっかけに、深く反省したことがあったという。
青野氏は、コロナ禍前までは基本的に出社して、会議もオフラインで参加していた。しかし緊急事態宣言後、原則在宅勤務になって会議も完全オンラインになり、そこであることに気づいた。
「『オフィスにいる人』ばかりが働きやすい状況を作ってしまっていた。リアルで参加する人とリモートから参加する人で行うハイブリッドな会議を実施していたが、『音声が聞こえにくい』、『文字が見えにくい』といった不満があることに後になって気づいた」(青野氏)
猛省した青野氏は「出社しない社長」になることを決意。場所を問わず社員に声を届けるために、特定の場所にいない方がいいと判断した。それから2年が経過して、オンライン上のコミュニケーションに変化が見られた。社員全体の出社率は1割程度になり、オンライン上のコミュニケーションの量(コメント数)は7倍以上になったという。
青野氏は、「変わるためには、ツールや制度の導入だけでなく、風土の改革が必要」と断言。「周りが『こういう働き方をしてもいいんだよ』と風土を作らなければいけない。さもないと、ツールや制度を導入したとしても、結局うまく使われないままで、変わることができない」と持論を語った。
「大企業よりも中小企業の方が圧倒的に変えやすい。中小企業の皆さんは今がチャンスだと思って、テレワーク時代の改革に挑戦してほしい」(青野氏)