眺望や採光には重要だが、熱的弱点がある“窓”
Twitterで窓に関する興味深いツイートがあった。
それは「日本は窓を中から見て楽しみ、ヨーロッパでは外から見て楽しむ」というテレビ番組を見て、Googleで実際に画像検索をした結果に感動したというものだ。
筆者も実際にGoogleの画像検索で「日本 窓」と「ヨーロッパ 窓」と検索をかけて比較したところ、「日本 窓」と検索をかけると室内から窓に目を向けた画像、「ヨーロッパ 窓」と検索をかけると室外から窓に目を向けた画像が上位に多く並んでおり、驚いた。
ぜひ読者も一度検索をかけてほしい。
これはSEO※1パフォーマンスによるもので、学術的に「日本は窓を中から見て楽しみ、ヨーロッパでは外から見て楽しむ」と証明されたわけではない。
これは筆者の考察に過ぎないが、日本は窓から見える景色を室内空間に取り入れる“自然共存型”の住まいつくり、ヨーロッパでは室内外の空間を隔てる“自然分離型”住まいつくりの傾向が強いためではないかと当てもなく考えている。
このように窓は部屋からの眺望や採光、ファザードにとって非常に重要であるが、使用される部材や構造が制限され、他の建築部位と比較し断熱性を高めにくいといった熱的弱点が問題視される。
室内環境は窓(ガラス+サッシ)の性能によって大きく変化する。冬期では窓からの熱流出が58%、夏期では窓からの熱流入が73%となっている。
そのため、近年の新築住宅には、複層ガラスや低放射コーティング膜、また樹脂サッシなどの導入により熱的弱点を補うような断熱化が図られている。
しかし、日本は以前では樹脂サッシなどと比べ熱伝導率が圧倒的に高い、アルミサッシが主流であった。今も改修をしていない既存住宅の多くがアルミサッシだ。
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■窓の後進国ニッポンの窓ぎわ事情
既存住宅においては、アルミサッシから樹脂サッシ、単層ガラスから複層ガラスなどへの変更や改修には手間や費用がかかる。
今回は、そんな既存住宅に向けて窓性能向上を簡便に行う方法について紹介したい。
それは既存の窓に「遮熱断熱フィルム」を貼付することである。
窓の性能を簡単に上げてくれる“遮熱断熱フィルム”の仕組み
遮熱遮熱フィルム(以後フィルム)とは、その名の通り窓に遮熱・断熱性能をもたせるフィルムのことである。遮熱性能とは室外から室内への熱流入を遮る性能、断熱性能とは室内から室外へ熱を逃さない性能と捉えてもらえればよい。
熱の伝わり方には以下の3種類が存在する。
この中でフィルムが効果を発揮するのは「熱放射」である。
その効果について理解するためには、まずは光と熱の性質を理解する必要がある。
光は電磁波の一種であり、波長によって異なる性質を持つ。なお、波長とは電磁波1つ分の波の長さである。
波長はγ線、X線、紫外線、可視光、赤外線(これらも電磁波である)など長さによって区分されており、人間が見ることができる波長域(可視光)はおおむね360nm~830nmの範囲とされている。そして可視光より波長が短い方には紫外線があり、長い方には赤外線※2がある。
電磁波の持つエネルギーは物質に吸収されると熱に変換される。また、金属以外の多くの物質は赤外線(厳密には遠赤外線)を吸収しやすい特性をもっており、ハロゲンヒーターや電子レンジなどは赤外線を放射することで身体や食材を温めている。
一方、熱を持った物質からは電磁波が放射され、物質の温度が高いほど短い波長の電磁波が放射される。可視光域で考えるとガスコンロの火をイメージすると分かりやすい。炎の温度が赤より青い方が高いのは、温度によって放射される電磁波の波長が異なるからだ。
さて、ここまで理解したところでフィルムに求められる性能について考えてみたい。窓には採光性、眺望性が求められるため、フィルムには遮熱・断熱性能だけでなく透明性も確保しなければならない。
すなわち、可視光域の波長(360nm~830nm)は透過させるフィルムでなくてはならない。そして、遮熱・断熱性能については夏期冬期に分けて以下のような機能が求められる。
夏期(遮熱):太陽からの日射熱(近赤外光)を室外側に反射させ、可視光を室内に透過させる
冬期(断熱):室内の暖房熱(遠赤外光)を室内側に反射させ、可視光を室内に透過させる。
これらの機能イメージを表したものが上図である。
つまり遮熱断熱フィルムは、既存の窓に光と熱をコントロールする機能を付与する効果がある。例えば冬期の場合、暖房熱を室内に反射させることによって「窓ぎわが寒い」といった現象を緩和できる。
フィルムを選ぶ際のポイントだが、筆者がおすすめするのは放射率がなるべく低い商品を選ぶことだ。
放射率の詳しい話は割愛するが、簡単にいえば物体からの熱放射のしやすさを表す数値だ。
一般的にフィルムや高機能窓には透過率、反射率、吸収率などの数値が記載されている。工学を知っている人であれば良いが、馴染みのない人にとっては混乱してしまう数値だ。 もちろん、建築用途によってそれら数値の配分が重要と場合があるが、一般住宅の場合はそこまで重要視することもないと考える。
したがって、さまざまな商品があって混乱して迷った場合は、放射率で判断してみるとよいだろう。
文中注釈
※1SEO:検索エンジン最適化
※2赤外線:赤外線は波長の長さによって、近赤外線(波長:約0.7μm~2.5μm)、中赤外線(約2.5μm~4.0μm)、遠赤外線(約4.0μm~1,000μm)に分かれる。