BNPLという言葉を耳にしたことはあるだろうか。BNPLとは、Buy Now, Pay Later(バイナウペイレイター)の略で、後払い決済サービスのことを指す。先に商品を受け取り、後で商品の代金を支払う。手数料不要で分割払いができるサービスもある。クレジットカードに代わる決済手段として世界中から注目を集めており、Report Oceanの調査によると、2021年の世界のBNPLの市場規模は約510億ドル(約5兆8,981億円)だった。

国内においてもBNPL市場は堅調に伸びており、矢野経済研究所の調べでは、2024年度には2019年比2.7倍の1兆8800億円まで拡大する見通し。2021年10月には米ペイパル・ホールディングスが約27億ドル(約3000億円)で、ペイディの買収を完了させるなど、日本市場に対する海外企業からの注目度も高い。

そして2021年12月15日、国内BNPLサービスの先駆者ともいえるネットプロテクションズ・ホールディングス(HD)は東証一部上場を果たした。同社は2002年に日本初のリスク保証型のEC向け後払い決済サービス「NP後払い」の提供を開始し、それを皮切りにして、会員制の後払い決済サービス「atone(アトネ)」や、BtoB向けの「NP掛け払い」などを次々に展開。2021年3月期の取扱高は4,381億円と、国内BNPL市場で40%以上のシェアを持つ。加盟店総数は7万6000を超え、1,580万人のユニークユーザーがいる。

BNPLとはどのようなサービスで、どのようなメリットがあるのだろうか。ネットプロテクションズ・ホールディングス 代表取締役社長の柴田紳氏に、同社の上場の狙いとともに話を聞いた。

株式会社ネットプロテクションズ・ホールディングス
代表取締役社長 柴田紳 氏
一橋大学社会学部卒業後、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)に入社。3年間働いた後、投資会社であるITX株式会社に転職。転職してすぐに株式会社ネットプロテクションズへを買収するかどうかの案件が浮上。半年間調査を実行した後、2001年11月に同社を買収、2004年に同社の代表取締役に就任。事業が何もないところから、日本初のリスク保証型後払い決済サービス「NP後払い」を創り上げる。2017年、アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー特別賞を受賞。日本後払い決済サービス協会会長。

BNPLは具体的にどのようなサービスですか?

柴田氏:BNPLサービスと一口に言っても海外と日本ではサービス形態が違います。アメリカなどの海外では分割払いがメインです。4回に分割できるのが基本的で、分割手数料もかかりません。その分事業者から決済手数料を高くもらうというビジネススタイルです。デビットカードでの支払いもできて、ユーザーからすると非常に使いやすいモデルです。

このサービス形態には与信通過率の低さが関係しています。例えば、アメリカだとクレジットカードの申込時の審査通過率は50%を切っています。日本と比べても、アメリカではクレジットカードを作りにくいんですね。

なので、若い人がECで商品を買う手段がそもそも限定されていました。海外では、分割手数料がかからず若年層でも利用できるといった点で、後払いサービス市場が急激に伸びていると思います。

一方で、当社が提供しているBNPLサービスでは、分割払いには対応していません。「NP後払い」では購入してから14日以内に代金の一括後払いといったモデルを採用しています。というのも、私たちが提供しているのは安全な決済サービスという位置付けで、日本においては、分割して商品を購入したいというニーズよりも、ちゃんと商品を確認してから代金を支払いたいといったニーズのほうが高いからです。要は、若年層向けに特化した決済サービスではないということです。

そういう理由もあって、利用者の4分の3が女性で、30~50代の女性が一番多いユーザー層です。また7割のユーザーがクレジットカードを保有しているので、「クレジットカードの与信に通らないから」といった理由でサービスを利用していないことが分かります。