2022年の年頭にあたり、F5ネットワークスジャパン 代表執行役員社長 権田裕一氏は、以下の年頭所感を発表した。

新年明けましておめでとうございます。

2021年は、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが依然として続き、オンラインでのサービスやコミュニケーションが核となり、ビジネスや人びとの暮らしを支えた一年となりました。従来からのデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きに加えて、このようなコロナ禍でのニーズが後押しした結果、ユーザエクスペリエンスに対する期待値がさらに高まり、安全でスピーディ、且つ使いやすいアプリケーション環境が今まで以上に企業に求められるようになりました。そのような状況下で、当社としても「セキュリティ」、「革新性」、「スピード」の三軸に焦点を当て、お客様を支援させていただけたことを嬉しく思います。

F5 Networksが設立されてから四半世紀、私たちは多くの進化を遂げました。昨年末、これまでのF5の進化を呼称にも反映すべく、米国本社の社名を「F5Networks, Inc」から「F5, Inc」へと変更することを発表しました。2022年は、F5の25年の進化の節目であり、新しい時代へ向けた転換点の年になると考えております。F5は25年前に負荷分散の企業として誕生しましたが、創業以降、技術面・事業面の双方において進化を重ね続け、現在は、サイバー攻撃からお客様のアプリケーションを守り、快適で安全なデジタル体験を実現させるサービスの提供をするに至っております。このように幅広くサービスを提供させていただく中で、「Networks」という言葉では自社の技術群を的確に表現できていなかったため、社名変更を発表いたしました。世界中のお客様やユーザコミュニティの生活・ビジネスを支え、さらに豊かにできるよう、今後とも貢献してまいります。

2022年の見通し

2021年は、新型コロナウイルスの影響を受け、デジタルトランスフォーメーション(DX)の世界的な加速が確認された1年となりました。2022年においては、「エッジコンピューティング」、「加速する金融業界のデジタル化」、「5G」、「Eコマースの進化とセキュリティ」、「DevOpsのトレンド」の5つのテーマが重要な鍵を握ると考えています。

エッジコンピューティング・エッジクラウド

デジタル化の進展に伴い、データはかつてない速さで生成されています。大量のデータストリームは、システムやプロセスの効率性や有効性を向上させる上で貴重なインサイトを提供します。エッジコンピューティング及びエッジクラウドは、世界中の何百万ものデバイスからのデータを処理・加工・配信する手段を変革しつつあります。エッジコンピューティングは、企業に多くのメリットをもたらす一方で、攻撃対象が拡大することでリスクも増大します。今後数年以内には、エッジの継ぎ目を利用した、ターゲットを絞った攻撃が確認されるようになると予想されます。今こそ、エッジセキュリティの課題に積極的に取り組む時です。このように変化するシステムのセキュリティを確保するためには、サイトとの安全な通信、統一されたセキュリティポリシの施行、自動化、サイト間の観測可能性などが必要です。F5のAdaptive Applicationsの考え方(激変する環境に対して柔軟にスケールし、守り、素早く対応するアプリケーション)は、エッジからクラウド、データセンタまで、分散型アプリケーションが直面する課題を解決することができます。

加速する金融業界のデジタル化

近年のデジタル経済ブームを受け、デジタル資産が注目を浴びるようになりました。デジタル資産のために作られた新しい金融構造は、デジタル資産の形成・移転・保管・所有の方法を大きく変えるため、金融サービス事業者に重大な影響を与えることになるでしょう。2022年に向けて、金融業界で注目を集める重要な分野がいくつかあります。1つ目は、フィンテック企業と従来型の大手金融機関を中心としたオープンバンキング技術の発展と加速です。オープンバンキングの取り組みに後押しされ、フィンテック業界も世界的に大きな進展を遂げています。2つ目は暗号通貨です。世界中の銀行は暗号通貨を主流資産として受け入れ、富裕層顧客のために暗号通貨に投資できるソリューションを構築する見通しです。3つ目は、人工知能(AI)と機械学習(ML)で、金融サービス分野では、顧客情報と不正行為の検知の両方での活用が見込まれます。暗号通貨やデジタル資産への関心が高まっていますが、あらゆる脆弱性を突いてくる悪質な犯罪者の一歩先を行く必要があります。AIとMLを適切に活用することで、不正行為をより早く防止し、不正対策部門の効果を高めるという、今日の業界の課題を克服することができます。

5G

2022年には、通信事業者各社は、運用効率の向上を目指し、5Gの導入やIT資産、マネージドサービスソリューションなどで培った経験を活用することになる見通しです。顧客のニーズに合わせたエッジコンピューティング・ソリューションに加えて5Gインフラを試験的に実施したことで、クラウド、セキュリティ、SaaSのようなサービスを統合する機会が生まれています。また、通信事業者各社自身も、よりアジャイル化をすすめ、DevOpsやDevSecOpsと呼ばれるDX時代ならではの開発・運用体制の導入が加速すると考えられます。

Eコマースの進化とセキュリティ

コロナ禍により、Eコマースが急拡大し、多くの小売業者がオンライン事業を拡大しました。2022年に小売業者が消費者に選ばれ続けるためには、ユーザーのオンライン体験に焦点を向け、アプリ上の利便性を高める必要があります。コロナ禍で、世界的に「後払い決済、通称:BNPL(Buy Now, Pay Later)」の利用が急増しています。これらBNPLサービスの決済システム基盤を提携する各社とEコマース事業者の提携も同時に進んでおり、2021年にはPayPalが日本のBNPL企業である「Paidy(ペイディ)」の買収を発表するなど、日本でも注目が集まっています。しかし、BNPLサービスは利便性が高い反面、新しいリスクも顕在化させます。口座乗っ取りや新規口座開設詐欺などの手口は、BNPLシステム基盤にも従来のシステム基盤と同様の懸念になります。また、WEB版のスキミングとも呼ばれるフォームジャッキング攻撃など、新たなデジタルサプライチェーンの脅威も登場しています。

DevOpsのトレンド

「DevOps」はIT業界の最重要課題となっており、2022年もDXが進むにつれ、引き続き注目されると思われます。本番環境のデプロイメントが数万のマイクロサービスやそれ以上の規模になるに伴い、カオスエンジニアリングなどの新しい手法がさらに積極的に活用されるようになる見通しです。カオスエンジニアリングは、弱ったウイルスを制御しながら注入して免疫システムを攻撃する予防接種のように、バグやシステム障害に対処するための訓練を組織に施すものです。Gartner社によると、2023年までに40%の組織がDevOpsの一環としてカオスエンジニアリングの手法を導入し、想定外のダウンタイムを20%削減すると予測されます。

変異型ウイルスの感染拡大や地球温暖化、脱炭素への移行など、私たちは多くの課題に直面していますが、2022年が皆様にとりまして、そして日本および世界にとりまして、より大きな成長と飛躍を遂げる実り多き1年となりますことを心から祈念申し上げます。

F5は引き続き、世界中のお客様の生活の向上に貢献するパートナとして、進化を続けてまいります。本年も皆様の一層のご指導、ご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。