製造業全体で人手不足が進む中、いかに労働生産性を上げて高い競争力を付けるか。機械部品大手のミスミグループが出した答えは、ボトルネックとなっていた「調達」プロセスのデジタル化を進め、時間を創出することだった。
11月24日に開催されたビジネス・フォーラム事務局×TECH+フォーラム「経営とIT Day 2021 Nov.」では、ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長を務める吉田光伸氏が登壇し、製造業の抱える課題と、同社が提供する製造業DXサービス「meviy(メビー)」による解決策について語った。
カタログ販売で部品調達に最初の革命を起こす
ミスミは製造業向けに機械部品を提供するBtoB企業だ。2020年度の売上は3107億円。取り扱う商品点数は3000万超、800垓(=1兆の800億倍)のバリエーションで、世界最大級の品揃えを誇る。
そんな同社は約40年前、カタログ販売で製造業に最初の革新を起こした。当時、顧客は部品の設計図を作成しFAXで見積もりなどをやり取りした上で注文をしており、手間と時間がかかっていた。ミスミはこれをカタログ化することにより、部品の種類や形状などを選ぶだけで価格と納期がすぐに分かり、手軽に注文できるようにしたのだ。
また、カタログの導入により生産側でも製品の規格化・標準化が可能となった。結果として、低コストで製造できる国で半製品を作成し、最終仕上げの工場で仕上げ加工をするという方式を採れるようになり、「安く、早くを実現できるようになった」と、吉田氏は説明する。
そして今、ミスミは「ものづくりに『創造』と『笑顔』を」をミッションに掲げ、さらなる進化を追い求めている。
「ミスミは時間を大切にしています。時間を生み出すことで、ものづくり産業において人間にしかできない『創造』に時間を使うことができます。そこから生み出されるプロダクトでエンドユーザーや製造業で働くパートナーの笑顔を作っていきたいのです」(吉田氏)
製造業の戦い方は転換点にある
吉田氏はミスミがビジネスを展開する製造業の現状についても触れた。
製造業は、日本のGDPの2割程度を占める基幹産業だ。世界で見ても、6割以上のシェアを持つ日本の製品・部材は約270個あり、米国(124個)、中国(47個)よりも多い。
しかし製造業の労働生産性を見ると、1990年代、そして2000年までは世界トップだったのが、2018年には16位に下がっていることが分かる(OECD調べ)。その背景の1つが生産年齢人口の減少だ。これに加え、働き方改革関連法案により、「これまで残業でなんとかこなしてきた業務量をこなすのが難しくなっている。製造業の戦い方は転換点に来ているのではないか」と、吉田氏は投げかける。
「労働力と一人当たりの就業時間を掛け合わせた『日本の製造業の総労働時間』を見てみると、製造業が全盛期を誇った1980年代と比べて大きく減少しています。(これからの製造業では)働く時間は量から質へ、労働生産性改革をいかに実践するかが生き残りをかけるポイントになってきます」(吉田氏)