大阪大学(阪大)は12月9日、「朝食をあまり食べない」、「毎日飲酒する」、「喫煙習慣がある」などの生活習慣が、抗肥満作用を持つ因子として知られている「線維芽細胞増殖因子(FGF)21」の血中濃度を上昇させていることを発見し、抗肥満作用にも影響を及ぼしている可能性が示唆されることを発表した。

同成果は、阪大 キャンパスライフ健康支援・相談センターの中西香織講師、同・瀧原圭子教授らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

FGF21は、FGF19やFGF23とともにホルモン様の作用を持つFGF19サブファミリーに属しており、糖脂質代謝を改善するなどの抗肥満作用を持つ因子として知られている。そのため、2型糖尿病や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などの肥満関連疾患の新しい治療戦略として期待されている。

一方で、肥満症や2型糖尿病患者では血清FGF21値は逆に上昇していることも報告されており、その機序として、肥満や2型糖尿病では「FGF21抵抗性」の状態となっており、FGF21の抗肥満作用が低下していると考えられてきたという。しかし、これまで生活習慣と血清FGF21値の関連についての報告はなかったことから、今回、FGF21の血中濃度に影響を与える生活習慣についての調査を行うことにしたという。

具体的には、健康診断を受検した基礎疾患のない男性398名を対象に、身体計測、血液検査、問診による生活習慣調査と血清FGF21値との関連についての解析を実施。その結果、血清FGF21値は年齢、肝機能に影響されるだけでなく、朝食摂取頻度、飲酒頻度、喫煙習慣などの生活習慣でも変化することが確認され、中でも朝食の頻度が「週0~2日」、飲酒の頻度が「毎日」と回答した群、ならびに喫煙者は非喫煙者と比較して血清FGF21値は有意に上昇していることが確認されたという。

この結果は、これらの生活習慣の下では、肥満症や2型糖尿病と同様に、「FGF21抵抗性」状態となり、FGF21の持つ抗肥満作用が低下する可能性があることを示唆するものだという。

そのため、研究チームでは、今回の成果を踏まえ、これらの生活習慣の改善が肥満症の予防につながることが期待されるとしている。

  • 生活習慣病と肥満の関係性

    朝食摂取頻度、飲酒頻度、喫煙習慣による血清FGF21値の変化 (出所:阪大Webサイト)