探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」から持ち帰った試料の一部と、地球に送り届けたカプセルの実物の公開が、日本科学未来館(東京都江東区)で始まった。会期は13日まで(7日休館)。はやぶさ2の試料とカプセルを同時に見学できる機会は初めてという。

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    はやぶさ2がリュウグウで採取した試料。1回目(左)と2回目のもの=東京都江東区の日本科学未来館

公開中の試料は、はやぶさ2が持ち帰った計約5.4グラムのうち、2019年2月の1回目の着地で採取した地表の物質と、同年7月の2回目で得た地下の物質の、各1個。基本的な特徴を記録する作業を経て、全体の約1%を詳しい科学分析に回さず、展示用に用意したものの一部。それぞれ長さ2.2ミリと2.1ミリで、重さはともに2ミリグラムという。展示では拡大鏡越しに、黒い小石のような形が確認できる。

カプセルは本体である「インスツルメントモジュール」のほか、大気圏突入時に生じる高熱からカプセルを守った「前面ヒートシールド」と「背面ヒートシールド」、電子機器部、パラシュート。分析中の前面ヒートシールドのみ、模型の展示となった。

はやぶさ2の精巧な実物大模型や、試料の初期分析で得られた成果、試料の特徴を記録して分類する取り組みの解説も展示。また会期中、JAXAの試料分類作業のリーダーによるオンライン形式のトークセッションを11日に開く(事前申し込み制)ほか、館内で同館の科学コミュニケーターによる解説を毎日1回行う。

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    はやぶさ2の実物大模型

目の見えない人が触って体感できるよう、はやぶさ2とリュウグウのミニチュア立体模型も用意しており、希望を係員に伝えることで体験可能という。

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    立体模型について報道陣に説明する日本科学未来館の高木啓伸副館長

4日からの一般公開に先立ち、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の藤本正樹副所長は3日、報道陣に「わずか3年前まで小惑星の表面にあったものが目の前にあることを、実感できる展示になった。多くの人が関わり、そのおかげで成功していることも感じてほしい」と述べた。

同館科学コミュニケーターの松島聡子氏は「(往復)52億キロのはやぶさ2の旅を思い返すのもよいし、これから先の試料分析から得られる科学的成果に期待を膨らませるのもよいかと思う」とした。

展示は「特別企画『帰還一周年 「はやぶさ2」カプセル&リュウグウの“かけら”大公開』」。常設展入館料(大人630円ほか)のみで見学できる。混雑緩和のため土、日曜日は館内で入場整理券を配布。平日も入場制限や整理券の配布を行う場合があるという。

一方、相模原市立博物館も12日まで試料を展示している。事前申し込みは終了したが、10日までは余裕があり当日整理券で観覧可能。ただし定員になり次第、締め切るという。

はやぶさ2は2014年12月に地球を出発し、18年6月から19年11月までリュウグウに滞在。2回の着地で地表と地下の試料を採取し、昨年12月6日に試料が入ったカプセルをオーストラリアの砂漠地帯に着地させた。

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    日本科学未来館の展示では、はやぶさ2が持ち帰った試料を拡大鏡越しに見られる

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