LegalForceは12月1日、「スタートアップが支える企業のDX(デジタルフォーメーション)」をテーマに記者説明会を開催した。説明会では、同社の代表取締役CEOである角田望氏が、国内企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の現状とバックオフィス業務からDXに取り組むべきとする理由を述べた。

8割の人が自部署のDXが進んでいないと感じている

説明会の冒頭に、角田氏は「DXは単に紙の情報をデジタル化することではない。これまでアナログで作業していた業務をデジタル化し、業務プロセス自体をデジタル化したうえで、さらにビジネスモデルを変革することが真の意味でのDXである」と、DXに関する認識の統一を促した。

  • LegalForce 代表取締役CEO 角田望氏

    LegalForce 代表取締役CEO 角田望氏

同社が国内の会社員や会社役員、公務員を対象に実施した調査の結果から、「自部署のDXが進んでいる」と認識している人は23%にとどまり、77%は自部署のDXが進んでいないと感じていることが浮き彫りになった。

企業のDXが進まない要因としては、推進者の不在と予算不足を挙げる回答者が多かったようだ。DXを推進する人材がいない背景には、ITスキルの不足などによって適切な人材を割り当てられない場合と、経営層がDXの必要性を感じていないために適切な担当者を選出できない場合があるのだという。

  • DX推進者がいない要因は、ITスキルの不足とDXの必要性を感じない点だという 資料:LegalForce

DXを促進するカギはSaaS

SaaSとは「Software as a Service」の略で、ベンダーが管理するサーバ上に構築したソフトウェアを、ユーザーが継続利用料を支払い利用できるクラウドサービスの一種である。ユーザー側でソフトウェアに必要な環境を構築する必要がない点、常に最新の状態のソフトウェアを使用できる点がSaaSのメリットだ。

角田氏が「SaaSがDXを促進する」と述べる理由は、オンプレミス型のソフトウェアと比較してSaaSは導入時のコストが安価であるからだ。経済産業省のレポートによると、国内企業のIT関連費用の約80%は現行ビジネスの維持または運営のために割り当てられている。SaaSを利用することで、ソフトウェアの開発や保守に必要なコストを抑えながら最新のサービスが利用できるため、新規事業開発やビジネス変革に投資できるのである。

  • SaaSを活用することで、コストを抑えながら新規事業に資金や人材を投資できる

また、SaaSを利用することで自社でのサーバ管理が不要となるため、メンテナンスや障害対応のためのエンジニアを社内に置く必要がなくなるうえ、すでに設計されたサービス利用方法を自社に当てはめられるので、システムの構築方法を新たに考える必要がない。加えて、SaaSではデータがクラウド上に保存されるため、昨今のテレワーク需要の高まりにも対応可能だ。こうした理由から、同氏は「SaaSはDXのための課題を解決可能な有力な選択肢である」と訴えた。

DXはバックオフィス業務から始めるべきだ

さらに、角田氏は「SaaSを活用してバックオフィス業務からDXを進めるべき」とコメントした。デジタル技術によって生産性や品質が向上しやすい業務特性があることに加えて、権限管理やログ管理をシステム化することで内部統制の強化が図れるためである。

また、営業部などフロント業務は企業ごとに意思決定プロセスや業務プロセスが特有である一方、それらの事業部と比較して、バックオフィスに業務に従事する部署は企業ごとのオペレーションに差が出にくいため、事業や業態にかかわらずシステムのベストプラクティスが構築しやすいのだという。

バックオフィス業務へのSaaSの導入は管理部門の判断で進められる場面が多く、しかも全社員にシステムを適用できるため比較的大きな効果を得やすい点も起因する。経営層の視点としてもSaaSの導入効果を認識しやすいので、DXの成功体験を他部署へ展開しやすい点も、バックオフィス業務からDXを開始すべき理由だ。

  • 特に人事労務や経理系の業務はデジタル化しやすく、全社的な影響が大きい

同社が提供する「LegalForceキャビネ」は、契約書をアップロードすることで契約情報を自動でデータベース化し、契約書の管理と契約リスク管理体制の構築を支援するSaaSだ。

同氏は「契約書はすべての業務に関わる、ビジネスの根幹になるものだ。契約書は保管することが大切なのではなく、契約書で定めている権利や義務の内容を管理することが最も大切である」として、紙の契約書のデジタル化にとどまらず、契約業務の本質を捉えて業務の在り方を変えていくべきと述べた。

さらに続けて「契約締結後の管理体制の構築や、契約書が定める権利と義務のマネジメントを適切に実施できれば、事業価値を大幅に強化し企業の競争力に貢献できる」と説明会の講演を結んだ。

  • 契約業務にDXを導入することで、事業競争力を向上できるとのことだ