岐阜大学は富山県産の天然ゼオライトが肥満モデルマウスの高血糖・高脂血症・肥満を改善すること、ならびにその安全性調査から食物繊維のような機能性成分としてその応用が期待されることを見出したと発表した。

同成果は、岐阜大学教育学部家政教育講座の久保和弘 教授や美健産業の河合康之 会長などの研究チームによるもの。詳細は、日本における栄養科学、食品科学およびビタミン学に関する研究を扱う英文誌「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」(オンライン版)で発表された。

地殻中に豊富に存在するミネラルである天然ゼオライトは、イオン交換特性をもつアルミノケイ酸塩として知られ、選択的に水を吸着する特性から、イオン交換剤や触媒、農業における土壌改良剤、公衆衛生における水質浄化剤、環境保全における資材などさまざまな用途に活用されている。

また、その吸着特性と消化管から吸収されないという特性から、整腸作用や有害物質の吸着排出効果などが期待されることから、家畜の飼料添加剤としても活用されており、食物繊維のような機能性食品成分として、過剰な糖質や脂質の吸収を抑制し、肥満などの予防にもつなげられるのではないかと期待されているものの、生活習慣病予防の観点からの研究報告はこれまでなかったという。

そこで研究チームでは今回、生活習慣病予防を目的とした食品の開発への応用を目的として、天然ゼオライトの安全性検討(急性経口毒性試験)、ならびに高脂肪飼料摂取に伴う肥満・2型糖尿病に対する有効性検討(長期摂取試験)を行ったという。

その結果、富山県八尾層群の火成岩由来のゼオライト(平均粒径約100μm)が、肥満モデルマウスの高血糖・高脂血症・肥満を改善することを発見したとする。具体的には、急性経口毒性試験として、14日間の観察ならびに観察終了後の解剖検査からも異常ならびに死亡が観察されず、ゼオライト接種群と対象群の体重にも差が見られないことを確認したという。また、高脂肪飼料を用いた18週間にわたる長期摂取試験では、飼料摂取量、摂取エネルギー量、飲水量および初体重には差がないにも関わらず、体重増加量はゼオライト摂取量依存的に抑制され、ゼオライト0%群に比べてゼオライト10%群で有意に抑制されることを確認したとするほか、肝臓、精巣上体脂肪(内臓脂肪)、腎周囲脂肪(内臓脂肪)の重量は、ゼオライト摂取量依存的に低下し、肝臓、精巣上体脂肪(内臓脂肪)についてはゼオライト0%群に比べてゼオライト10%群で有意に低下したという。

さらに、長期摂取試験の12週目に実施した経口ブドウ糖負荷試験においても、空腹時の血糖値とインスリン濃度、およびブドウ糖投与後の食後血糖ピークとインスリン分泌量が、ゼオライト摂取量依存的に抑制され、ゼオライト10%群はゼオライト0%群に比較して、すべての測定点で有意に低下していること、ならびに血漿の中性脂質と総コレステロール、および非HDLコレステロール/HDLコレステロール比もゼオライト摂取量依存的に低下していることが確認されたという。

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    長期摂取試験における各種の数値 (出所:岐阜大プレスリリースPDF)

なお研究チームでは、今回の研究から判明したゼオライトの有効性について、食物繊維がもつ消化管吸収の調節作用に似ていると考えられるとしており、将来的には、高脂肪食に伴う高血糖・高脂血症・肥満を予防することを目的とした機能性食品への応用が期待されるとしている。