IDC Japanは11月25日、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している国内企業のデータ利活用動向とIoTを推進している企業の取り組み状況に関する調査結果を発表した。これによると、企業におけるデータ利活用の課題としては、データサイエンスやエンジニアリングスキルの不足を懸念する傾向が強く、ローカル5Gの採用が未定な企業では導入価値/ROIが不明確という意見が多いことがわかった。

  • 勤務先企業のデータ利活用の課題 資料:IDC Japan

両調査は同社が2021年4月および8月に、全国の従業員規模100人以上の企業を対象としてWebアンケートにより実施したもので、回答者数は1万7460人。

データ利活用統括者を対象とした調査は、課長職以上で勤務先企業がDXを目的としたデータ利活用を推進しており、かつ自社におけるデータ利活用に関する目的や課題などを2割以上把握している回答者を「データ利活用統括者」と定義しており、有効回答者数は310人。

データ利活用の課題では、データサイエンスやエンジニアリングスキルの不足を懸念する傾向が強い。また、組織の分断やデータのサイロ化、経営層の意識の低さや将来に向けた見通しの甘さ、システムの過度な複雑化、データパイプライン内のプロセス間の無駄などが課題として目立っていた。

全社的なDX実現に向けたデータ利活用を行っているレベル3の企業では、すでに全社的にDX実現に向けたデータ利活用を進めていることから、「活用データの仕様・形式が不統一」「取り組みの負担が一部社員に集中」「KPIが未確立」といった実践的な課題が特徴的だ。

部分的なDX実現に向けたデータ利活用を行っているレベル2の企業では、「組織の分断・サイロ化」や「データサイエンスやエンジニアリングスキル不足」などが目立つ。データを通じた現状把握/予測などが中心のレベル1の企業では、「システムの過度な複雑化」や「データ活用プロセス間の無駄が多大」が顕著であり、経営層の「ビジョン/意識の欠如」の回答も多かった。

  • ローカル5Gの取り組み状況と採用が未定な理由 資料:IDC Japan

IoT担当者を対象とした調査は、企業の中で自身の業務の1割以上をIoTにあてる回答者を「IoT担当者」と定義しており、有効回答者数は299人。

IoT担当者の所属企業のIoTの取り組みを、「DX用途(顧客サービス価値向上、新ビジネス創出を目的とした用途)」と「社内用途(社内業務効率化、コスト削減を目的とした用途)」に分類すると、DXでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により取り組みが「拡大した」と「一時的に中止した」の回答割合が社内用途よりも高いことがわかった。DX用途でIoTを推進する企業では、COVID-19を機に今後取り組みの進捗が二極化していく可能性が高いと同社は考えている。

ローカル5G(第5世代移動通信システム)の利用状況や意向では、IoT担当者の所属先のうち利用中の企業は全体の15%程度に達している。ローカル5Gの採用が未定と回答した、全体の約45%の企業に対してその理由を尋ねると、「導入価値/ROIが不明確」が多い。ローカル5Gソリューションの提案に向け、IoTソリューションを提供するベンダーはベストプラクティスを顧客に積極的に公開することが重要だと同社は指摘している。