ServiceNow Japanと広島大学は11月24日、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関わる人材育成を目的とした教育プログラムの実施結果に関するオンライン説明会を開催した。

今年5月、ServiceNowは次世代を担うDX人材育成のための特別教育プログラム「NextGenプログラム」を広島大学の学生向けに提供することを発表しており、今回、その取り組みの結果が紹介された。

「NextGenプログラム」は、次世代の人材に必要なデジタル、ビジネス、およびリーダーシップのスキル開発および育成を行い、新卒採用時から即戦力となることを目的とする無償プログラムだ。

第一営業統括本部エンタープライズ営業本部 兼 公共・社会インフラ営業本部営業本部長 野澤さゆり氏は、「ServiceNowの技術力を持った人材が不足しているため、NextGenプログラムにより、人材育成を行う、採用を支援する」と説明した。

  • ServiceNow Japan 第一営業統括本部エンタープライズ営業本部 兼 公共・社会インフラ営業本部営業本部長 野澤さゆり氏

「NextGenプログラム」は「アカデミックプログラム」「青少年育成とデジタルリテラシープログラム」「生活のためのスキル」の3つのプログラムから構成されるが、広島大学の取り組みは「アカデミックプログラム」に基づくもので、日本国内初のNextGenプログラム提供とのことだ。

  • 「NextGenプログラム」の概要

広島大学におけるNextGenプログラムは4つのステップに分けて行われた。第1ステップでは、NowPlatform上で、ノーコード/ローコード開発でアプリを作成するための基本的な技術やServiceNow認定資格を取得するための基礎知識の習得が行われた。

第2ステップでは、アプリ開発のための理論やリーダーシップ論の学習が行われた。「アプリ開発に必要な技術に加えて、開発するアプリに付加価値をつけるための理論とプレゼンテーションスキルも習得してもらう」(野澤氏)

第3ステップでは、グループワークでアプリ開発を行い、インターンシップを受け容れた企業の担当者など50名の前でプレゼンテーションを実施した。第4ステップでは、それまで学んだことを生かすため、企業や東広島市でインターンシップを実施した。

  • 広島大学におけるNextGenプログラムの概要

広島大学 情報メディア教育研究センター 西村浩二教授からは、同大学におけるデジタル人材育成への取り組みについて説明がなされた。同大学では、コロナ禍でデジタルを活用した教育を推進しなければならなくなったことを受け、大学全体がデジタルを活用して発展していくためのDX推進基本計画を策定した。その基本方針の一つに「既存人材の研修体制とデジタル人材の強化」があり、今回の取り組みはその一環となる。

  • 広島大学 情報メディア教育研究センター 西村浩二教授

西村教授は、デジタル人材育成の取り組みの背景について、次のように説明した。

「自分が企業での就業を経験した際、大学と企業が個人に求めるものが違うことに気付いた。これは大学の中だけでは気付かないことであり、学生たちにもこの経験を与えたいと思った。また、2020年度から、情報・データサイエンス科目を全学生に実施しているが、身に着けた技術を発揮する場が学内になく、習得した技術が定着しないということがあった。そして、インターンシップはこれまで就職活動のステップと位置付けられており、一定のスキルを持たないメンバーは経験できなかった。こうした課題に対し、ServiceNowと共同でNextGenプログラムの提供に加え、インターンシップを組み合わせて、人材育成プログラムを実施することにした」

今回のプログラムには、大学1年生から大学院2年生まで計14名が参加したが、年代の違う学生がペアを組んで参加したことで、学生からも評判がよかったそうだ。

西村教授は、今回のインターンシップについて、「一般のインターンシップと異なり、事前にトレーニングを行ったことで、学生目線では『短いインターンシップ期間でも、デモ環境での開発から成果物のプレゼンまで広く経験できた』というコメントが得られたほか、『受け入れ側の対応コストの低減につながった』という企業側のメリットに言及するコメントも得られ、企業目線も持てるようになったのは大きい」と語っていた。

広島大学のインターンシップを受け入れた東広島市役所からは、総務部 DX推進監 橋本光太郎氏が説明会に参加し、インターンシップの実施状況が紹介された。東広島市は今年4月、ServiceNow Now Platformで市民と市役所、学校をつなげる「市民ポータルサイト」を開設したことを発表している。

  • 東広島市役所 総務部 DX推進監 橋本光太郎氏

橋本氏は、市民ポータルサイトを開設した経緯について、「これまでさまざまな市民の皆様向けのサービスを提供してきたが、接点がバラバラになったので、入り口を一つにしたかった。また、市民の方々のライフスタイルが多様化してきたことで、情報を得にくくなっていた。こうしたことから、市民ポータルを提供することにした」と説明した。今回は小中学校の保護者をターゲットとしており、98.3%が加入しているという。

東広島市では、CRMのプラットフォームに関するプログラマー育成のため、職員2名がNextGenプログラムに参加したという。インターンシップでは、10日間にわたり広島大学の学生2名のインターンシップで受け入れた。

橋本氏はインターンシップの取り組みを2つ紹介した。その1つは、市の事業であるファミリーサポートセンターの業務フローの可視化だ。ServiceNowを利用して、3者間のマッチングを実現するフローを学生が設計したそうだ。もう1つは、CRMに不足しているサービスの提案だ。学生からは問い合わせフォームの提案があったそうで、今後、実装予定だという。