富士フイルムは11月18日、日本、アメリカ、ドイツ、中国の経営層1200人を対象に実施した「データ保管における環境問題に関するグローバル意識調査」の結果を公表し、磁気テープによるデータストレージについて記者説明会を実施した。

2050年までのカーボンニュートラル社会の実現に向けて各国でCO2排出量削減の取り組みが実施されている中で、データストレージの使用によって環境負荷が生じることを認識している回答者は61.4%にとどまる。日本のみに着目するとその割合はさらに低く、37.1%と4カ国中で最低だ。

  • 企業のCO2排出の一員として「データの保管」を認識している管理職は、日本では37%にとどまる 資料:富士フイルム

世界で蓄積されるデータ量は年々増加しており、2025年には現在の2.7倍の量になると推定されている。また、データセンターのエネルギー消費量は年率31%ずつ増加しており、デジタル化社会においてデータの保持に伴う環境負荷の軽減が喫緊の課題とされる。

富士フイルムの記録メディア事業部長である武冨博信氏は「記憶媒体として磁気テープを目にする機会は減っているかもしれないが、環境負荷の軽減に資するデータ利活用に対する回答の一つが磁気テープだと思っている」と話した。磁気テープの主流となっているLTOテープは、ハードディスクドライブと比較してレイテンシーが劣る一方で、データ保存の電力消費によるCO2排出量を最大95%削減できるとのことだ。

  • 富士フイルム 記録メディア事業部長 武冨博信氏

近年では、米国勢のGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)や中国勢のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)などの大手プラットフォーマーの中にも磁気テープの採用を明言する企業が出てきている。その背景として、同氏は「データ爆増を支える超高容量化」「最後の砦としてデータを守る高信頼性」「圧倒的な低消費電力」の3点を紹介した。

  • 磁気テープを利用する3つの利点

特に環境負荷の点では、磁気テープはハードディスクドライブよりも優位性が見られる。世界のアーカイブデータの80%とバックアップデータの57%をテープに移行すると仮定した場合、2030年には年間43.7%のCO2排出を削減でき、2019年から2030年までの累計で6億6400万トンのCO2を削減できるとの試算もある。6億6400万トンのCO2は、日本が2年間で排出するCO2に相当するとのことだ。

武冨氏は続けて、「全てのデータを磁気テープに保存すべきと思っているわけではない。高頻度に読み書きするデータではなく、省令によって一定期間の保存が定められているデータなど低頻度で必要となるデータを磁気テープに置き換えることで、環境負荷を圧倒的に低減できるはず」と話した。

  • データの保存目的に応じて適材適所の記憶媒体を使用すべきだという

また、同調査の結果からは、データのアクセス頻度に応じて適切な保存方法を選択することによりサステナビリティやコスト、セキュリティに影響を与えることを認識している人は55.9%だったことも明らかになっている。日本ではわずか26.5%である。

  • データにアクセスする頻度によって適切な保存方法があると知っている人は55.9%にとどまる 資料:富士フイルム

その一方で、それぞれのデータに適した低コストでサスティナブルなデータ管理方法があれば自社に導入したいとする回答者は76.1%にも上る。日本のみに着目しても53.0%と、約半数に検討の余地があることが明らかになった。

  • 日本の回答者の約半数が低コストでサスティナブルなデータ管理方法があれば導入したいと回答している 資料:富士フイルム