新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日立製作所(日立)は11月5日、スロベニアの国営送電事業者ELESと2018年から構築を進めてきたクラウド型エネルギー管理システム(AEMS)を完成させ、実証事業第2フェーズにおける実証運転を開始したと発表した。

同実証運転では、アイランディング(系統事故時の自立運転)、瞬時電圧低下(瞬低)対策、アンシラリーサービス(送電事業者への調整力の提供)などの機能を有したクラウド型AEMSをデータセンターに構築し、大口需要家および電力小売事業者向けのエネルギーサービス事業の確立を目指す。

  • 実証運転を開始した、イドリア市内の配電系統に設置した蓄電池システム

アイランディングでは、停電時にクラウド型統合配電管理システム(DMS)と連携し、病院などの重要施設を含むエリアを系統から切り離し、蓄電池から電力を供給することにより、長時間の停電を回避する。同社によると、日本国内で実際の配電系統を使用したアイランディングの実証例はなく、スロベニア国内でも初めての実証事業になるとのこと。

瞬低対策としては、電力供給を必要とする工場などで、降雪や落雷などの自然災害に起因して発生する瞬低に対して、エリア内に設置した蓄電池を活用する。これにより需要家の重要負荷設備を保護する。

またアンシラリーサービスに関しては、蓄電池およびエリア内の需要家に設置された工場、ビル、家庭向けのエネルギー管理システムと連携し、系統安定化に寄与する周波数制御のための調整力を送電事業者に提供する。

スロベニアでは2014年の大寒波など自然災害による大規模停電が発生しており、病院など重要施設で長期停電を避ける対策の重要性が増しているという。また工場では落雷などによって瞬間的に電圧が下がる瞬時電圧低下(瞬低)が発生すると工場内の機器類に大きな影響を与えるため、これを防ぐための対策が必要とされている。

日立とELESは今後、同実証事業の成果の分析・評価結果をもとに、先行して実証事業が完了したクラウド型DMSとともに、クラウド型AEMSをサービス形態で提供する、欧州を中心としたビジネスモデルの展開について検討していく方針だ。