実写画像を一発でベクター化する「Make It Pop」

実写の画像からベクター画像をトレースするのは、地味ながら意外と骨が折れる作業だが、「Make It Pop」ならばAdobe Senseiの技術によって自動的に行うことができる。例えば、次のような画像を読み込ませたとする。

  • 実写画像からベクター画像をトレースするのは地味に大変

    実写画像からベクター画像をトレースするのは地味に大変

「Make It Pop」は境界線などを適切に判別して、次のようにベクター画像化してくれる。

  • 「Make It Pop」であればコンテンツの意味を理解しながら自動でベクター化できる

    「Make It Pop」であればコンテンツの意味を理解しながら自動でベクター化できる

「Make It Pop」の驚くべきところは、腕や体、背景など、各コンテンツの意味をきちんと理解した上で、個別にパス化してくれることである。そのため、ベクター化した後で人物だけ抜き出したり、腕だけ角度を変えたりといった編集が簡単に行える。

次のスクリーンショット、右の渦巻きのようなシェイプを人物の周りに巻きつけるように配置しようとしている例である。

  • 右の渦巻きのシェイプを人物に重ねると

    右の渦巻きのシェイプを人物に重ねると

渦巻きのチェイプを人物に重ねるように移動させると、人物の手前側に表示される部分と、後ろ側に表示される部分が判別され、次のように自動で立体的な配置が行われる。「Make It Pop」は背景とオブジェクトの違いを識別できているため、このようなことが実現できるのだという。

  • 人物の手前側の部分と後ろ側の部分が自動で判別される

    人物の手前側の部分と後ろ側の部分が自動で判別される

動画を自動で絵画風に描き換えられる「Project Artful Frames」

写真を絵画風に変換するツールはすでに出回っているが、「Project Artful Frames」はそれを動画に対して行うことができる新技術になる。それも、参考画像として読み込ませた絵画と同じタッチに仕上げてくれる。

次の例は、左が参考画像として読み込ませたゴッホの『夜のカフェテラス』で、右が変換元の動画である。

  • 左が参考画像、右が変換元の動画

    左が参考画像、右が変換元の動画

これに対して「Project Artful Frames」を使うと、次のようなゴッホの油絵風のアニメーションが作成される。

  • 動画がゴッホの油絵風のアニメーションに

    動画がゴッホの油絵風のアニメーションに

油絵だけでなく、水彩画や鉛筆画なども参考画像に使えるという。次の例は、参考画像に鉛筆画を読み込ませている。先ほどの例だと、参考画像と元動画はどちらも夜の街並みという似たシーンだったが、今度の例はまったく別のシーンである。

  • 参考画像として鉛筆画を指定してみる

    参考画像として鉛筆画を指定してみる

「Project Artful Frames」では、ここから女性が歩く鉛筆画風のアニメーションを作成した。

  • 女性が歩く鉛筆画風のアニメーションが完成

    女性が歩く鉛筆画風のアニメーションが完成

参考画像と元動画の組み合わせを工夫することで、さまざまな新しい表現が可能になるという。

好きなポーズの写真を作り出す「Project Strike A Pose」

ストックフォトで写真を探している時、「服装はこっちの写真がいいけど、ポーズはこっちのほうがいいな」と思うことはないだろうか。あるいは、モデルを依頼してひと通りの写真を撮り終わった後で、「あのポーズも撮っておけばよかった」といった経験がある人もいるだろう。

そんな悩みを解決するのが「Project Strike A Pose」だ。これは、人物の顔や服装などを維持したまま、ポーズだけ異なる新しい写真を作り出す技術である。下の例の場合、左が元の写真、中央がポーズのための参考写真、そして右が新たに生成された写真になる。

  • >顔や服装は元の写真のままで、ポーズだけ参考写真のものに置き換わる

    顔や服装は元の写真のままで、ポーズだけ参考写真のものに置き換わる

顔や服装は元の写真のままで、ポーズだけ参考写真のものに置き換わっている。次のように、後ろ向きの写真を作ることもできる。

  • 後ろ向きの写真も生成可能

    後ろ向きの写真も生成可能

この技術を使えば、1枚の写真からいろいろなポーズの写真を簡単に作り出すことができる。参考写真はストックフォトなどで探してきてもいいし、自分でポーズを取ってモデルになってもいい。イメージに適したポーズの写真が手元に無い場合などに威力を発揮するだろう。

以上が、Sneaksセッションのハイライトとなる。冒頭で触れたように、Sneaksセッションで紹介されたこれらの技術は、Adobe社内で研究および開発が進められている段階で、実際にいつ製品に搭載されるのかなどの予定は一切立っていないものだ。過去のAdobe MAXで発表されたまま、数年経ってもまだ実用化されていない技術はたくさんある。それでも、「もし実用化されたら」という期待でワクワクさせてくれるのが。Sneaksセッションの魅力だ。

特に今年の発表は実用的なものが多く、すぐにでも使いたいというデザイナーは少なくないだろう。面倒な作業をツールに任せることができるようになれば、その分だけ人間はよりクリエイティブなことに使える時間が増える。Creative Cloudで使えるようになる日が待ち遠しい。