岡山大学は10月26日、自立高齢者において、1秒間に発音できる「タ」と「カ」の回数が多い(=舌がよく動く)と栄養状態が良好であり、栄養状態が良好である人は要介護の前段階である「フレイル」状態の人が少ないという関連性が確認されたと発表した。

同成果は、岡山大病院 歯科・予防歯科部門の澤田ななみ医員、岡山大 学術研究院 医歯薬学域 予防歯科学分野の森田学教授らの研究チームによるもの。詳細は、老年学を扱う学術誌「Gerodontology」に掲載された。

フレイルとは、加齢に伴って、筋力の低下に代表されるさまざまな身体機能の低下が起き、日常生活に支障が出たり、要介護状態になったりしやすい状態のことを言い、口の機能のわずかな衰えについては、「オーラルフレイル」と呼ばれている。これまでの研究では、オーラルフレイルとフレイルに関係があることが示されているほか、オーラルフレイルと栄養失調が関係すること、栄養失調とフレイルが関係することもそれぞれ別個に報告されていたという。

そのためオーラルフレイルとフレイルとの関係において、栄養状態の影響が介在する可能性が議論されてきたが、実際にオーラルフレイル、栄養状態、フレイルの関係を詳しく調査した研究報告はこれまでになく、その関係性についてはよくわかっていなかったという。

そこで研究チームは今回、岡山大病院予防歯科外来を受診する60歳以上の患者を対象に、年齢、性別、全身疾患、歯数、歯周状態、口腔機能、栄養状態および身体機能の調査を実施。分析を行ったところ、1秒当たりに発音できる「タ」と「カ」の回数が多い、つまり舌がよく動くと栄養状態が良好であり、栄養状態が良好であるとフレイルである人が少ないことが判明したという。また、高齢であるほど舌が動きにくく、栄養状態が悪く、フレイルである人が多いことも判明した。

今回の研究成果から、研究チームは舌の運動機能を維持・改善する適切な介入を行うことにより、フレイルを予防・改善できる可能性があるとしているほか、身体の健康と口腔の健康はつながっており、元気な身体で楽しい人生を過ごすためにも、口腔内のむし歯や歯周病といった病気に注目するだけではなく、口の機能についても大切にしてもらいたいとコメントしている。

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    今回取得されたデータを基に分析された結果から導き出されたモデル (出所:岡山大プレスリリースPDF)