NECは10月25日、大阪大学とBeyond 5G領域での産学連携の取り組みを発表した。社会実装まで見据えた成果の創出、ビジョン形成、社会コンセンサスの醸成を目指し、11月1日には「NEC Beyond 5G協働研究所」を大阪大学に設置する。

同研究所ではBeyond 5GとAI技術を活用し、実世界を仮想空間に再現するデジタルツインを高度に発展させた「確率的デジタルツイン」の開発を目指す。

大阪大学 統括理事・副学長の金田安史氏は、「本学では共同研究講座・部門や協働研究所など、大学内に100件以上の産学連携の組織が活動している。本研究所も、本学が目指す将来を見据えた地球規模の社会課題の検討・解決に貢献するものと考える」と期待を込めた。

  • 大阪大学 統括理事・副学長 金田安史氏(左)、大阪大学大学院情報科学研究科 研究科長 村田正幸氏(右)

「確率的デジタルツイン」は、刻一刻と変化する現実の世界の環境やAIの認識誤差、ネットワークの遅延といった不確実性を考慮し、実世界を確率的に推定し未来を予測する技術だ。

大阪大学大学院情報科学研究科 研究科長の村田正幸氏は、「本研究所では確率的デジタルツインを活用し、人、建物、自動車、都市といった実世界をまるごと即時にデジタル化して、仮想世界として再現。そのうえで仮想世界上に集積された4次元(3次元+時間)データを活用して、未来予測や人とロボットの共存などの新しいサービスの創造を目指す」と説明した。

  • 「NEC Beyond 5G協働研究所」の研究ビジョン

同研究所の確率的デジタルツインでは、実世界の観測処理や認識に基づいて、実世界の制御まで行い、制御によって起こった変化を取り込んだ予測まで実現することを目指す。そのため、誤差を前提にした確率的な情報に基づく処理をすることにより、突発的事象や実世界の不確実性を許容することが可能になるという。

Beyond 5Gでは、空間・時間といった物理的制約から解放され、新たなコミュニケーション体験により、生活者の求める多様な価値観に沿う働き方や暮らしが実現する社会が到来すると考えられている。

Beyond 5Gの実現にあたって予想される変化として、NEC 執行役員常務 河村厚男氏は、ネットワークとIT技術の融合により人・モノ・コトがシームレスに繋がる世界が実現し、その中でデジタルツインによるリアルとデジタルのボーダレス化が進むことを指摘。「単体の企業や大学ができることではなく、ステークホルダーとの共創を進め、産学連携のエコシステムを構築することが重要だ」と語った。

  • NEC 新事業推進本部 本部長 新井智也氏(左)、NEC 執行役員常務 河村厚男氏

今後は実験ネットワークの運用による研究インフラの確保とビジョンの積極的な発信により、産学の共創パートナーを集めて多様な実証実験を実施し、新たな人材の発掘・育成も行っていく。

同研究所の副所長を務める、NEC 新事業推進本部 本部長の新井智也氏は、「確率的デジタルツインの実現にはネットワークとAIを深化させる必要があり、今後はAIの認識技術やロボットの制御、通信制御などの研究・開発を進めていく。研究開発に留まらず、成果創出と実証を進め、社会実装まで見据えたビジョン形成、社会コンセンサスの醸成を目指す」と述べた。