富士通は9月2日、説明可能なディープラーニング技術「Deep Tensor」を活用して新薬開発を支援するサービス「FUJITSU Digital Laboratory Platform SCIQUICK-DT(SCIQUICK-DT)」の提供を開始すると発表した。同社は、同サービスにより新薬開発の初期段階における実用性や安全性評価の支援を狙っている。
一般的に、新薬開発には約15年の期間と数百億円から1千億円以上の研究開発費がかかると言われている。研究の初期段階では候補となる全ての化合物を合成することができないため、全ての化合物に対する評価実験も実施できない。したがって、新薬開発の後期になってから特性や安全性の問題が露見して、臨床試験前のドロップアウトや、市場投入の断念を余儀なくされる場合も少なくない。
そこで、製薬業界では開発の手戻りをなくし、開発期間の短縮や開発費用の削減に有効な手段としてAI活用に対する期待が高まっている。一方で、機械学習の手法を用いて、新薬の特性や安全性を事前に予測および評価する場合には、過去の化合物の実験データを揃えたうえで、化学構造式を数値化する必要がある。
こうした背景を受けて同社は、新薬開発の初期段階において、その実用性や安全性を化学構造式から予測が可能な「SCIQUICK-DT」を提供開始するに至ったとしている。同サービスは化合物の原子のつながり方における特徴をグラフ構造データとして「Deep Tensor」に学習させておくことにより、化学構造式のみで学習モデルを構築し予測可能だ。これによって、新薬開発の初期段階でも高精度かつ容易に代謝安定性や経口吸収性が予測できるのだという。
また、オプションとして提供されるモデル構築サービスは、物理特性や毒性などの利用者の必要に応じた評価項目の化合物データを学習させることで、利用者独自の学習モデル構築にも対応する。Deep Tensorは予測結果の判断基準が判別可能であることから、新薬開発に不可欠な化合物デザインのヒントを得られるとしている。
なお、基本サービスの契約は3カ月あたり200万円から。オプションで提供されるモデル構築サービスは個別の見積もりが必要となる。