九州大学(九大)は8月27日、自分で脳活動を確認しながら訓練を行う「ニューロフィードバック訓練法」を3日間実施することで、長期記憶能力が向上することが確認されたと発表した。

同成果は、九大 基幹教育院の岡本剛准教授、九大大学院 システム生命科学府のYu-Hsuan Tseng大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

「ニューロフィードバック訓練法」は、コンピュータの手助けを得て、自分の意思で自分の脳活動を確認しながら調節していく訓練法として、1960年代からさまざまな方法が開発・応用がなされてきたが、長期記憶にも効果があるのかどうかは不明だったという。そこで研究チームは今回、「ニューロフィードバック訓練法が長期記憶に与える効果」を明らかにすることを目的とした実験を実施することにしたという。

具体的には、研究の意図を知らない学生32人を、脳波を用いたニューロフィードバック訓練法を行うグループ(訓練群)と行わないグループ(非訓練群)の2つに分け、1週間の記憶力の変化を調査。その結果、訓練群の方が1週間後の記憶忘却率を低く保てていたという結果が得られたとのことで、研究チームでは、訓練群で1週間の記憶保持力が向上したことを示していると説明している。

これまでのニューロフィードバック訓練法は、1週間から数か月におよぶ訓練期間が設けられることが多かったという。しかし今回の研究では、3日間でその後の長期記憶力を高められることが示されたとするほか、今回の成果から、脳が物事を記憶しやすい状態になるよう、脳の活動を自己調節できる可能性が示されたとしており、記憶力の向上は日常生活から学習や各種業務、認知症予防など、あらゆる年代の多くの場面でプラスになることは間違いなく、広く応用されることが期待されるとしている。

  • 記憶

    記憶6日後の忘却率の変化。2週目に脳波の訓練を実施した訓練群では、訓練前の1週目に実施した記憶課題の忘却率に対し、訓練後の3週目に実施した忘却率の方が低下=記憶力が向上していたということが示された。非訓練群でも3周目の方がわずかに忘却率が下がっているが、あまり変わらなかった (出所:九大プレスリリースPDF)