独学でデータ分析の学習を開始し、現在は同社でデータサイエンティストとして活躍する福山隆氏が、デジタル人材を目指したきっかけと学習のモチベーションについて話してくれた。

  • ライオン DX推進部 福山隆氏

--独学でデータ分析の学習に取り組み始めたきっかけについて教えてください

福山氏: 私は2015年に研究職として入社しました。入社後の3年間は化学系の基礎研究に従事し、それから製品開発の部署に異動になりました。2019年に、研究開発本部内にできたデータサイエンス室でデータ分析に本格的に関わり始めています。

もともとExcelを用いてデータをいじるようなことはやっていましたが、現在のようにPythonやデジタルツールを積極的に活用したデータ分析は行っていませんでした。当時携わっていた開発業務の中で、プログラミング言語やデジタルツールを生かせたらいいなと思ったのが、勉強を始めたきっかけです。

独学を始めた当初は、オンライン上の学習ツールを使って勉強していました。また、大学が講義を公開してくれる大規模公開オンライン講座(MOOC:Massive Open Online Course)も利用しました。自分の興味のある分野から学習を進めていましたね。

データサイエンス室へ移動になった直後は、実務として機械学習などを使ったことがなかったので戸惑いました。社内外の専門性の高い方と、課題を共有しながら一つ一つクリアしていきました。専門家に対してどのように課題を伝えるのか、あるいは、課題解決のためのツールをどのように見つけたらよいのかに苦労した記憶があります。

--DX人材として活躍するためには、何が必要でしょうか

福山氏: 私がデータ分析や機械学習に興味を持ち始めたのは、自分の業務で使いたいと思ったからです。独学でも学習を続けられたモチベーションとしては、この点が非常に大きいと思います。今目の前にある課題に対してどのような手法で解決できるのかを考えながら、社内のDXを少しずつでも進められるのが今のやりがいです。業務の課題を自分ごと化するのが、DX人材に必要な一歩目だと思います。

以前、生産現場のスタッフと情報共有をする機会がありました。よく話を聞いてみると、手作業でスケジュールを立てていることがわかったのです。生産の現場では業務が属人化していて、本来労力を割くべき創造的な業務に注力できず、負担がかかっていることがわかりました。そこで、デジタルツールを導入して解決方法を模索した経験は、自分の中での良い思い出です。

これは、現場の負担に対してDX推進部として課題を解決したいと強く感じた出来事です。私はもともと研究職だったので、研究員同士のコミュニケーションが主でした。しかし現在はDX推進部の一員として、全社の複数の部署と関わりながら一体感を持って会社に貢献できている実感があります。

--黒川さんはDX人材にとって何が必要だとお考えですか

黒川氏: まさに、福山が言った通りだと思います。私は天気予報の例がわかりやすいと思うのですが、例えば明日の降水確率が50%だとしたら、傘は持っていくでしょうか?傘を持っていくという選択も、折り畳み傘をカバンに入れておく選択も、傘を持たずに出かけて途中でコンビニで買う選択もありますよね。

降水確率もAI分析も同様です。今の課題が「雨に濡れないこと」だとすると、AIが提示するデータに対してどのような選択を取るのかはわれわれ人間次第です。プログラミングができることと、課題を解決できるかどうかは別問題だと思っています。課題に対してどのように向き合うのかが、DX人材として重要だと思います。

--お二人から読者の皆様へ、メッセージをお願い致します

黒川氏: これからグローバルで戦っていくには当社だけでは太刀打ちできませんので、他社様も含めて協業する必要を感じます。当社が持つ健康データだけではなく他社様が持っているヘルスケアデータも活用しながら、どのような取り組みができるのかをディスカッションの段階から始めていきましょう。

福山氏: 私がデータサイエンティストとして日々の業務を行う中で、他社のデータサイエンティストも同様の課題を抱えていることが多いなと思うことがあります。お互いのDXを進めるためにも、交流の機会を作っていけたらと思っていますので、まずはお声がけいただけたら嬉しいです。

  • ライオン本社エントランスにて(画像左:黒川氏、画像右:福山氏)