三井デザインテックはこのほど、本社を移転し「CROSSOVER Lab(東京 銀座)」を開設した。同社の哲学であるクロスオーバーデザインの考え方と、新型コロナウイルス感染症の影響から見えてきたニューノーマルでのオフィスの価値を掛け合わせて、新オフィスがデザインされているとのことだ。同社が報道関係者向けにオフィス説明会を開催したので、その様子をお届けする。
同社のデザイン哲学であるクロスオーバーデザインは、住宅やオフィス、ホテル、ビル、医療施設など、さまざまな領域における空間づくりに携わった経験や、そこで培った手法および知見を、他の領域にも取り入れることで、横断的な発想で新たな空間の創造を追求する考え方である。
同社は2020年10月に、三井不動産リフォームと統合している。これによって、個人の暮らしから企業オフィスの課題まで、領域横断的な空間デザインを提供できる体制を構築しているとのことだ。
会社の統合に伴って、複数の拠点に散在していたスペースデザイン事業やインテリアデザイン事業などの主要ビジネス部門を、新オフィスに集約することになったという。拠点を集約することで社員間でのコミュニケーションを活性化し、シナジー効果を促進する環境を目指したとしている。新オフィスの設計は2020年5月頃にスタートした。
同社の執行役員 クリエイティブデザインセンター長 見月伸一氏は新オフィスの設計について、「これまではホテルやカフェ、オフィスなど、空間のカテゴリーによってデザインが大きく異なっていた。しかし、われわれは異なるカテゴリーが複合して、クロスオーバーすることで空間としての新たな価値が生まれると思っている。これからのニューノーマル時代のオフィスの価値を考えると、人が集まってコミュニケーションをとることで創造性を高める空間こそが必要になってくるはず。そうした想いをデザインで表現した」と述べた。
本社の入口を通ると、まず最初に大きな左官壁が目に入る。同社とラナユナイテッドが「beacapp Here PRO」の技術を活用して共創したデジタルアートなのだという。社員や来訪者のビーコンをセンサーで検知し、その人数や割合に応じて季節ごとのアートが投影される。壁面には凹凸があり、この凹凸をなぞるように投影されるアートが変化する。
ビーコンにはBluetooth Low Energy(BLE)が用いられている。同様の仕組みはデジタルアートだけでなくオフィス全体にも活用されており、各社員がどこにいるのかをリアルタイムに測定して、各フロアの利用率測定にも活用されているとのことだ。
オフィス内のオンライン会議ブースにも、空間デザイン企業ならではの工夫が施されている。Web会議用の10ブースはそれぞれ、椅子の角度やテーブルの高さが異なっており、ミーティングの内容やその日の気分に応じてブースを選べるという。
各ブースの背景として、ファッションブランド mina perhonen(ミナ ペルホネン)がデザインしたファブリックボードが飾られている。800種類のデザインの中から、「Well-being」や「リラックス」など、同社のイメージに合うテーマを厳選したとのことだ。
同社の執務エリアでは、個人用に集中力を高めるための空間の割合が10%以下と非常に低い一方で、オフィスの大半を人と人との交流が生まれる空間に充てている。その理由としては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてコワーキングスペースやサテライトオフィスを活用したテレワークが定着した一方で、オフィスでの偶発的な交流や、人との出会いの重要性を再認識した点が大きい。
完全なフリーアドレス制ではなく、チームごとに緩やかなエリアのみを指定し、多様な職種の人材が交わる空間にすることで、チーム間での偶発的な協業を促す狙いがあるという。また、チームごとに指定されるエリアは数カ月ごとに入れ替わる。同社はこれらの仕組みをネイバーフッドと呼んでおり、組織の枠組みを超えた多種多様な個性や専門性の連携を高めることを期待している。