安藤ハザマらが参画する山岳トンネル遠隔臨場支援システム開発コンソーシアムは7月26日、山岳トンネル工事を対象として、クラウド環境を活用した遠隔臨場支援システムを開発したと発表した。
同コンソーシアムには安藤ハザマの他に、エム・ソフト、日本システムウエア、山口大学名誉教授中川浩二氏、筑波大学が参画している。同コンソーシアムは国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定されている。
山岳トンネル工事において施工管理を効率化するには、トンネル坑内を俯瞰して、数百メートルにわたる作業区間の重機や仮設備の配置を適切に管理する必要がある。しかし、こうしたトンネル工事では、切羽の進行に伴って作業区間が長くなり、通常の無線通信では電波が届きにくくなるなどの理由から、トンネル全線にわたる施工情報を共有することが困難である。そのため、トンネル坑内全体の状況を効率的に可視化する方法が求められている。
山岳トンネル工事では掘削時に切羽の地質を評価するために、近傍から目視で切羽の観察を実施しているが、その精度や定量化、安全性が課題になっているという。さらに、所定の頻度で受発注者の双方が切羽観察を行うので、両社の作業調整によって業務ロスが発生する場合があり、円滑な工事のために受発注者間の効率的な地質情報の共有が要求されている。
こうした背景を受けて同コンソーシアムでは、山岳トンネル坑内および切羽における受発注者の接触機会の低減や、施工管理業務の省力化を目的として、クラウド環境を活用した遠隔臨場支援システムの開発に至ったとのことだ。同システムは、2020年11月から玉島笠岡道路六条院トンネル工事において施工実施しており、2021年5月には国土交通省から総合評価B(試行は一定の成果があり、技術の社会実装に向け今後の技術開発が期待される)の評定を受けている。
同システムは、トンネル全線の可視化システムと、切羽地質情報取得システムから構成されている。トンネル全線の可視化システムは、安藤ハザマが開発したトンネルリモートビューを利用しているという。トンネルリモートビューは、360度カメラを取り付けた車で坑内を走行して画像を撮影することで、GNSS(全球測位衛星システム)が使用できない空間内でも、車両の走行距離から撮影位置情報を取得できる。撮影したデータはクラウドサーバに保存され、受発注者がWebブラウザ上で閲覧可能となる。
切羽地質情報取得システムは目視による切羽観察に代わるものとして、穿孔データを基にした岩盤の圧縮強度に加えて、風化程度と割れ目間隔についての定量評価を実施するシステム。カメラやハロゲン照明、制御PCなどを1台の計測車両に搭載し、計測したデータから定量評価結果を出力する。これらのデータもクラウド上で共有されるため、受発注者が迅速に情報共有できるとのことだ。
安藤ハザマは今後、計測可能な項目を拡大し、取得画像の高精細化などシステムの改良を進めて、山岳トンネル現場の施工管理のさらなる効率化に取り組む考えだ。