アリババグループは2017年から、国際オリンピック委員会(IOC)のワールドワイドパートナー契約を結んでいる。第32回大会(東京2020)の開幕を目前に控え、アリババグループのアリババクラウドが記者説明会を開催したので、その模様をお届けする。
説明会の冒頭に、アリババクラウド・ジャパンサービス カントリーマネージャー Unique Song氏は「私たちは東京2020で、Webページの作成をはじめとして、選手や会場スタッフ、メディア、観客など、イベントに関わる皆さんをさまざまな角度から最新の技術で支援していくつもりだ。当社の最新技術がこのような世界的なイベントで活用できることは非常に楽しみである」と、挨拶を述べた。
同社はアスリート向けに、3Dアスリート・トラッキング(3DAT)を提供する。同製品はAIを使用したコンピュータ・ビジョン・ソリューションであり、競技時の選手の動きをほぼリアルタイムで解析できるものだ。また、競技中の選手の動きを取り込み、バイオメカニクス分析の結果から加速度や時速などのリアルタイムデータを画面にオーバーレイ表示可能なため、没入感のある新たな視聴体験を観客に提供できるのだという。なお、同システムは陸上競技100mのほか短距離競技でも活用される。
また、新国立競技場の会場スタッフに向けては、熱中症対策デバイス「heat stroke measure」を提供する。同製品をスタッフが耳に装着することで、深部体温や心拍を測定して熱中症リスクをリアルタイムで把握できる。ベースラインの体温を測定しておくことで、各スタッフに合わせた体調管理を実現するという。
さらに競技会場には、14カ所に暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)メーターが設置され、気温や湿度、日射量、輻射熱などの指標を観測している。これらのデータと各スタッフの測定データを統合して、熱中症リスクが高まっているスタッフのスマートフォンに4段階の警戒アラートが自動で送信されるとともに、水分補給や休憩を促すメッセージが表示される。このアラートは、現場監督レイヤのスタッフにも同時に表示されるため、現場の人員マネジメントにも活用できるとのことだ。
五輪を取材するメディア関係者には、簡便にソーシャルメディアの連絡先を交換可能な「Alibaba Cloud Pin」を提供する。同製品は、開催期間中に国際放送センター(IBC)およびメインプレスセンター(MPC)で取材をするメディアが、互いにデジタルネームタグを交換して友達登録できるものである。お互いのPinを背中合わせに近づけるだけで友達として登録でき、ソーシャルメディアの連絡先のほか、Pinを装着して移動した歩数などの取材活動状況を共有可能だ。
同製品には東京2020で実施される33競技をモチーフに、33種類のデジタルピンバッジ(ディスプレイ背景)が用意されている。初回起動時には5種類しか選択できないが、友達が5人増えるごとに新しい1競技のデジタルピンバッジが解放される。また、同社は大会期間中に記者会見場に行くことができないメディアに対し、「プレカンファレンス・オン・クラウド」を用意している。同サービスはクラウド上のメディアサービスで、記者会見のビデオを閲覧・ダウンロードできるものである。
説明会の最後に、東京2020を応援する観客に向けた取り組みとして、「TOKYO 2020 Make The Beat!」プロジェクトが発表された。このプロジェクトは、世界中の人々がSNSを通じて東京2020に参加できる応援プロジェクトである。リズムに合わせて手拍子やパフォーマンスの動画を撮影し、ハッシュタグ「2020beat」を付けて投稿することで、選手を応援できる。投稿された動画の一部は、同社のクラウドテクノロジーによってビデオ・コンピレーション作品として編集し、各競技会場で放映する予定だ。