NECネッツエスアイは7月20日、イノベーションの創発を目的としたニューノーマル時代の働き方のコンセプトを決定し、このコンセプトを体現するためのハイブリッドワークの実証を開始すると発表した。
同社は、コミュニケーションで創る包括的で持続的な社会を目指して、デジタルと5Gを掛け合わせたソリューションによって生き生きと働ける環境の創造を進めている。社会的に働き方改革が話題になり始める以前から、働く環境に向き合い、自社実証を繰り返しノウハウを蓄積している。
また、2007年には働き方改革を実現するための空間とICT事業を掛け合わせた、EmpoweredOffice事業を開始した。2018年に本社社員の8割がテレワークを導入し、2019年には業務プロセス改革に着手し、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業としてSymphonictを立ち上げた。
さらに2019年より、いつでもどこでも働ける環境の構築を進めており、飯田橋本社オフィスの60%分散化にも成功している。これによって通勤時間が短縮され、場所に縛られないチーム形成が促進されたとのことだ。オフィスの分散化に伴って、業務アプリやコミュニケーションツール、承認ワークフローをデジタル化し、どこで働いていても業務スピードを落とさない働き方が確立できているという。
一方で、新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けて分散型ワークが長期化することで、同社内では社員が新しい取り組みに挑戦する機会が欠落し、人材育成の機会損失につながるなど、大きな経営課題が浮上してきた。
こうした背景を受けて、オフィスワーカーとテレワーカーがイノベーションを創発する働き方へリデザインする新たなコンセプトとして、ハイブリッドワークを打ち出した。ハイブリッドワークには、リアル空間で生まれる共感や一体感と、バーチャル空間が持つ会社や国境を越えてつながることが可能な利点を組み合わせて、場所や時間を超えてチームの共感を生み出し、イノベーションを加速させる狙いがある。
同社は働き方改革を5つのレイヤから成るモデルとして捉えている。同社は、これまでインフラウェアやデバイスウェア、ソフトウェアといった下位のレイヤに対し、EmpoweredOfficeやSymphonictが取り組んできたことによる知見を有している。こうした知見を基に、より上位概念としてのデザインウェアと組織ウェア(ヒューマンウェア)を組み合わせて、働き方をリデザインしていくとのことだ。
同社の取締役執行役員常務 野田修氏は「ハイブリッドワークを推進することで、デジタルツールが人や場をつなぐとともに、どこにいても知がつながる環境を整備する。そして、知のつながりがさらに拡張されるような空間を作っていきたい」と述べた。
アメリカでは、グーグルが5月5日にハイブリッドワークを導入すると発表した。また、AppleやFacebookなどもリモートワークと出社のハイブリッドモデルを採用することを表明している。同社もこうした流れに乗り、ハイブリッドワークを推進していく構えだ。
同社執行役員の菊池惣氏は「ハイブリッドワークの推進は、いまだに正解が見えない取り組み」として、「ソフトウェアのアジャイル開発のように試行錯誤しながら、新しい働き方の構築に取り組みたい」と意気込みを見せた。
同社が目指すハイブリッドワークの命題は、イノベーションの創発である。この命題を達成するために、人材成長、チームワーク、共創空間の創造の3つをテーマに掲げ、組織や常識の壁を超えて目的を共有して新たな試みを実践するコミュニティ作りを実現していくとのことだ。
具体的な取り組みの1つ目が、若手社員の育成サポートである。将来的に会社の中核となる若手社員を起点に、テレワークでチームが抱えている課題を構造化し、解決策を検証していく。若手社員が、配属された組織だけでなく他の組織の社員との交流を促進するために、組織の壁を排除した新しいチームをバーチャル空間の中で編成するなど、テレワーク環境でも社員の成長を促進していくという。
2つ目のユニークな取り組みとして挙げられるのが、「OneGlobeOffice」である。この取り組みは組織や企業、国境を超えた共創活動を、ハイブリッド空間で構築した仮想オフィスで支援することで、イノベーションの加速を図るもの。Web会議システムを常時接続し、いつでも声をかけてコミュニケーションが取ることが可能になっている。パートナー企業も含めたメンバーが仮想オフィスを活用することで、新たなイノベーションの議論を容易に始められる。
同社オフィス内には、オフィスワーカーとテレワーカーの活動を支援する環境が見られる。遠隔地にあるオフィスと映像や音声を常時接続することで、一体感のあるディスカッションができる空間が形成されているのだ。実際に同一のオフィスで仕事をしているようにディスカッションが行えるため、スピーディーな意思決定の場になっているという。
同社のビジネスデザイン統括本部 ビジネスデザイン戦略本部長 吉田和友氏は「ハイブリッドワークをはじめとして、ニューノーマル時代の働き方をどうしていくのかは、われわれだけでなく世界共通の課題と認識している。われわれの取り組みに共感してくださる企業からの参画を待っている」と述べた。