横浜銀行は3月22日、無料会員制ポータルサイト「〈はまぎん〉ビジネスコネクト」に、「マネーフォワードFintechプラットフォーム」を導入すると発表した。同プラットフォームはマネーフォワードとアマゾンウェブサービスが連携して構築する複数のフィンテックサービスの共通基盤だ。

同プラットフォームでは、マネーフォワードが提供する個人顧客・法人顧客向けアプリやWebサービスに加え、他のフィンテック関連のパートナー企業が開発するさまざまなサービスとの接続を実現する。また、利用者の同意に基づき、複数金融機関の資産データや決済データを収集し、データ分析も行える。この発表に伴い、3社は記者説明会を開催した。

他行口座情報の連携開始で、資金管理を一元化

横浜銀行 執行役員 デジタル戦略部長の田坂勇介氏は、同社のデジタル戦略において、デジタル技術を活用することで、業務付加価値の向上と顧客体験(CX)の革新の実現を目指しており、そのための具体策として、「総合型デジタルマーケティングの実践」「CX向上」「法人向けポータル」を推進していると説明した。今回の発表は、このデジタル技術の活用の一環にあたる。

  • 横浜銀行 執行役員 デジタル戦略部長 田坂勇介氏

同行は2020年1月に、NTTデータ、マネーフォワードによって共同開発した 「 〈 はまぎん 〉 ビジネスコネクト」のサービスを開始。同ポータルでは、「取引照会、電子交付」「オンラインレンディング」「ビジネスマッチング」といった機能を提供している。現在、同ポータルを利用している企業は6000社に上り、5万社まで拡大を見込んでいるという。

「 〈 はまぎん 〉 ビジネスコネクト」のコンセプトは「対面・非対面の融合」「バンキング機能の強化」「Fintechとの連携」となっているが、今回発表された「マネーフォワードFintechプラットフォームとの連携はFintechとの連携を強化するためのものとなる。

  • 「〈はまぎん 〉ビジネスコネクト」のコンセプト

田坂氏は、「マネーフォワードFintechプラットフォームとの連携の目的として、「マネーフォワードのアカウントアグリゲーション技術を活用して他行口座情報の連携を開始することで、資金管理の一元化を実現」「マネーフォワードFintech プラットフォームのAWS基盤に自行口座情報、他行口座情報を連携・蓄積することで、既存IBの明細保有期間を超える デジタル通帳を実現」を挙げた。

田坂氏は、クラウドプラットフォームに対し、「われわれのデータ高度化に資することを求めており、コストやセキュリティを重視していたが、AWSは要件をすべて満たしていた」と述べた。例えば、AWSのPrivate Linkを活用することで、AWSの基盤内でセキュアに他社サービスと接続しているという。

田坂氏は今後の展望について、「マネーフォワードFintechプラットフォーム上にデータ分析基盤を構築して、他社のトランザクションも活用することで、お客さまの実態をより早く正確に把握して、適切なタイミングでのサポートを実現したい。また、独自のデータモデルを構築していきたい」と説明していた。

  • 「マネーフォワードFintechプラットフォーム」導入後の今後の構想

AWSが進める金融ビジネス戦略「Vision 2025」

アマゾン ウェブ サービス ジャパンからは執行役員 金融事業統括本部 統括本部長の鶴田規久氏が登壇し、同社の金融ビジネス戦略について説明した。同氏は日本IBMで金融資本市場の大型プロジェクトを数多く担当し、昨年8月に現職に着任した。

  • アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 金融事業統括本部 統括本部長 鶴田規久氏

鶴田氏は、金融機関に求められる変化として「Business Model Reinvention」「Engagement in New Normal」「Resiliency for the Future」を挙げ、これらに対する支援を提供する金融ビジネス戦略として「Vision 2025」を紹介した。

金融機関は「これまでの金融サービスの枠組みを超えた新サービスの開発、外部企業との連携によるビジネスモデルの構築」「データに基づく顧客インサイトを生かし、多様化する顧客ニーズへ応えること」「広域災害、気候変動などの継続する変化に対するレジリエンシー」が求められているという。

  • アマゾン ウェブ サービス ジャパンの金融ビジネス戦略「Vision 2025」

「Business Model Reinvention」に対して、AWSは「データを付加価値へ転換し、トップラインを拡大する」ための支援を行う。具体的には、2020年9月にデータ流通を可能にするAWS Data Exchangeを日本市場にリリースしたほか、外部連携をサポートするサービス群としてAWS PrivateLink、AWS API Gatewayを提供している。

「Engagement in New Normal」に対して、AWSは「ニューノーマルにおける顧客や従業員とのエンゲージメントの強化」を支援する。具体的には、Amazon Connectをはじめとする顧客エンゲージメントを強化するサービス群や顧客エンゲージメントのパーソナライズを可能とするAI/ML関連のサービスを提供している。

「Resiliency for the Future」に対して、AWSは「予測困難な変化に対する、高い可用性やセキュリティ、伸縮性の確保」を支援する。具体的には、2021年3月に大阪リージョンを開設したほか、FISC安全対策基準等ガイドラインに対するリファレンスを提供している。

鶴田氏は「われわれはこれまで、金融ITを効率化するインフラプロバイダーだったが、これからは金融ビジネスを変革するパートナーを目指す」と述べた。