日立製作所は3月17日、全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)が提供する、終身共済や医療共済など複数の共済の引受基準の見直しに向けた取り組みにおいて、医療ビッグデータの利活用に関する日立独自のノウハウや生活習慣病に関わる入院リスクを予測するAI(人工知能)を使用したリスク分析を行い、高血圧や脂質異常症(高脂血症)などの既往歴がある場合の引受基準を大幅に緩和できることを確認したと発表した。
JA共済連は、既往歴があっても共済に手軽に加入したいというニーズの高まりや高血圧などの生活習慣病が日本全国で増加傾向であることなどを受け、より多くの人にスピーディーに保障を提供するため、2019年から日立と共同で基準緩和に向けた検討に取り組んできている。
具体的には、日立が2018年に販売開始した8大生活習慣病発症による入院の可能性とその日数を予測するAIである「Risk Simulator for Insurance」で算出したリスク予測結果を始め、健康診断結果や診療報酬明細書(レセプト)などの医療ビッグデータ、JA共済連の過去の共済金支払い実績などを総合的に組み合わせ、疾病発症リスクの分析を行った。
今回の基準緩和では、生命保険や共済事業で用いる受入リスクの定量的評価手法を使用し、疾病ごとに評価指標の最適化を行っているという。特に高血圧と脂質異常症では、申し込み時に医師の診査を必要とせず書類の記入のみで完結できる「告知書扱い」での申し込みを新設する。また、喘息と高尿酸血症(痛風)についても告知書扱いの範囲を拡大する。 既往歴や持病がある場合でも、所定の条件を満たせば健康状態の申告のみで加入手続きが完了でき、職員のタブレットで申込みが完結できる範囲が拡大するなど、より多くの方々を対象にペーパーレスでのスピーディーな提供が可能になるとのこと。
JA共済連は2021年4月から新しい基準による契約の引受を開始し、健康状態に関する申告のみで加入できる範囲を拡大するなど、申込者の手続きの簡素化・迅速化を実現するとしている。
日立はこれまで、生命保険会社との共同研究や健康保険組合向けの事業支援を通して、保険の引受審査業務における医療ビッグデータの高度な解析ノウハウを蓄積してきたという。
今回の取り組みでもこれらの知見を生かし、将来の入院の可能性を多角的にシミュレーションしたことにより、適切なリスク許容範囲内での基準緩和を行い、健全な保障提供の実現を支援したとのことだ。