レノボ・ジャパンは昨年12月、同社の最新テクノロジーやソリューション、関連事例などを紹介するオンラインイベント「Lenovo Enterprise Forum Online 2020」を開催した。本記事ではその中から、「レノボの働き方改革とデバイス選択」と題する講演を紹介する。

講演者は、同社コマーシャル事業部企画本部製品企画部部長でワークスタイルエバンジェリストの大谷光義氏が務めた。

  • レノボ・ジャパンコマーシャル事業部企画本部製品企画部部長 大谷光義氏

大谷氏はまず、いわゆるコロナ禍、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大前後での働き方における常識の変化を取り上げた。

1つめは、従来はオフィスの自分の席で一日中働くスタイルから、在宅勤務が当たり前になったこと。

2つめは、コミュニケーションにおいて、社内外を問わずオンラインでのコミュニケーションやコラボレーションが普及してきたこと。

そして3つめは、労働時間での評価から、成果(アウトレット)で評価するジョブ型への移行が進んできたことだ。

  • コロナ禍前後での働き方の変化

働き方の中長期的な展望について大谷氏は、従来の形態を「Before」、今年度を「With」、そして願いを込めて2021年度以降を「After」と区分する。

それぞれの段階について、テレワーク/オフィス/人とのつながりという3つの観点で大谷氏は分析する。

テレワークに関しては、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催予定だったため、それに向けた取り組みを考えている人が多かったと大谷氏は振り返る。 しかし、それが延期になり、多くの人がテレワークを経験する状況になったのはご存知の通りだ。 大谷氏は、今後はオフィスでの勤務と在宅やテレワークとのハイブリッド形態になっていくのではないかと予測する。

オフィスについては、なぜオフィスに行く必要があるのかを、同社も含めて改めて考え直している状況だと大谷氏は語る。

それを受けて、オフィスのレイアウトを見直したいと考えている企業が増えているという。

人とのつながりに関しては、オンラインでのコラボレーションが常態化した一方で、オンライン会議などに質が求められるようになって来ているのではないかと大谷氏は思っているとのことだ。具体的には、音質や雑音対策など音の問題の解決や、従来は会議室に当然のようにあったホワイトボードのような仕組みを、オンライン会議でも求める気運が高まっているように大谷氏は感じているという。

  • 働き方の中長期展望

続いて大谷氏は、2020年5月に同社が実施した、世界のCIOに対するアンケート結果を紹介した。

これによると、CIOが重視している優先事項の上位5点は、従業員の満足度(EX)、働き方改革(ワークスタイル変革)、セキュリティ対策、破壊的なテクノロジーを使用して先端的なテクノロジーをいかに採用していくか、DX(デジタルトランスフォーメーション)だった。 これらのうち、1番目の従業員満足度から4番目の破壊的なテクノロジーまでは、DXを行う上でのベースラインと考えてよいのではないかと、同社では認識しているという。

  • 世界のCIOが重視する5つの戦略的優先事項

では、各項目について掘り下げてみよう。

まず、従業員満足度。 大谷氏は「DX対応への出発点」と表現しており、従業員満足度に対してきちんと投資している企業は、売上や利益、カスタマーエクスペリエンス(CX)の評価が非常に高いとのことだ。

一方で、勤務先で使用しているデバイスに満足していない従業員が1/3ほどいるという結果が出たという。

「近い将来、ミレニアル世代やZ世代といった若い人たちが社会に進出してくると、タッチやペン、音声でのオペレーションで仕事をこなす日が当然のようにやってきますので、今までの発想でのデバイス選択は必ずしも正解とはならないのではないかと考えています」(大谷氏)

  • 従業員満足度とDXとの関係性

ウィズ/アフターコロナ時代の、ニューノーマル(新常態)における働き方に関して大谷氏はABW(Activity Based Working)という言葉に触れる。

コンサルティング会社やオフィス家具メーカーなどがよく提唱しているとのことだが、大谷氏は「まさに働き方改革と連動しており、時間や場所にとらわれず、従業員がフレキシブルに選択をして生産性高く仕事をする仕組みだと考えています」と語る。

  • ウィズ/アフターコロナ時代のABW

同社も以前からそうした形態を目指していたとのことだが、そこにコロナ禍の影響が加わり、オフィスの位置付けが変わってくると大谷氏は指摘する。

さらに、ワーケーションやコワーキングスペース、サテライトオフィスなど自由度の高い勤務場所を選び、リアルかリモートか、コラボレーションか単独業務かといった形態を個人またはチームの意思で選択していくことが非常に理想的だと語る大谷氏は、これが従業員満足度を高める重要なポイントではないかと指摘した。

「働き方改革は、時短のためにやっているものではないはずです」と強調する大谷氏は、生産性を高めて企業の競争力を向上させるための働き方改革を実施することで、従業員満足度が高まり、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方によって顧客のことを考えて仕事をし、それによりCXが高まるという連鎖反応が求められると指摘する。

そのためのDXとしてデジタルに投資することが、「1丁目1番地という位置付けでもいいんじゃないかなと考えています」(大谷氏)

  • ニューノーマルにおけるDX推進の基盤

3番目のセキュリティについて、同社は2年ほど前から、多様なハードウェアやソフトウェア、協業パートナーのソリューションを組み合わせた形で、「ThinkShield」というブランドを立ち上げたという。

OSやアプリケーション周りの対策はユーザーが実施し、同社は最新のセキュリティ要件を加味したハードウェアやBIOS(ファームウェア)の実装などを提供することで、ユーザーと共に進んでいきたいと考えているとのことだ。

  • レノボが提供するセキュリティ

4番目の新しいテクノロジーの代表例として、大谷氏は同社の5G(第5世代移動通信システム)への対応を挙げる。

低遅延で高速な5Gにより、大人数がオンラインで多様な拠点・国で仕事をする状況における自動翻訳や、クラウド上の動画の多人数による共同編集、ホワイトボードでの遅延の無いコラボレーションといったことが実現可能な世界が、もう目の前に来るのではないかと大谷氏は示す。

同社のThinkPadのうちX1 FOLDやX1 nanoでは、5Gを搭載して提供するプランを発表済みであり、大谷氏は5Gによる高度なコラボレーションを「いち早く支援できるように邁進したいと思っております」と語った。

  • 5Gへの対応

働き方改革に対して、同社は「Smarter Workplace for All」という理念を掲げ、テクノロジーの力で日本の働き方改革を支援するため、「Smarter Devices」「Smarter Solution」「Smarter Knowledge」の3つの観点に注力しているという。

Smarter Devicesは、ThinkPadが代表するスマートデバイスだ。Smarter Solutionは、TeamsやZoomなどのユニファイドコミュニケーションをサポートするデバイス群を指す。

  • 働き方改革に対するレノボの3つの観点

観点の3つめであるSmarter Knowledgeに関連して、大谷氏はレノボグループが約5年前から取り組んできた無制限テレワークという取り組みを紹介した。 これにより蓄積した長所や短所、反省点といった知見を、コロナ禍を受けてスタートガイドとして2020年3月に無償公開したとのことだ。 その続編として、「テレワーク環境ガイド」と「リモートコラボレーションガイド」を提供している。

  • 無償配布中のガイド

テレワーク環境ガイドでは、在宅勤務で使用するデバイスの解説に加えて、仕事をする部屋や通信も含めた環境を紹介しているという。

リモートコラボレーションガイドでは、ZoomやTeamsなどツールの使い方というよりも、どのようなインビテーションを送るとうまくいくのかといった、使い方文化の浸透度合いに注力した冊子として無償提供していると、大谷氏は語った。