Amazon Web Services(AWS)とKDDIは12月16日、au 5Gネットワーク上で、モバイル端末やエンドユーザー向けに低遅延のアプリケーション構築を可能にするクラウドサービス「AWS Wavelength」の一般提供を東京で開始すると発表した。今後、大阪でも提供を予定している。
KDDIによる「AWS Wavelength」の提供については、AWSの年次イベント「re:Invent 2020」で、CEOを務めるアンディー・ジャシー氏が既に発表を行っていた。
KDDI ソリューション事業本部 サービス企画開発本部 副本部長 執行役員 丸田徹氏は、「5Gの特徴は、高速・大容量、多接続、低遅延と言われているが、われわれは低遅延に磨きをかけて、新たな価値を提供したいと考えている。これを実現するのが、AWS Wavelengthとなる」と語った。現在、AWS Wavelengthを提供しているのは世界で通信事業者4社となっており、国内ではKDDIのみだ。
従来、エッジコンピューティングにおいては、モバイルネットワークとインターネットを介してアクセスする構成になっており、丸田氏は「モバイルネットワークとインターネットの双方の遅延の影響を受ける状況にあり、遅延のコントロールが難しい。5Gの低遅延という強みを引き出すため、%GネットワークでAWS Wavelengthを配置することで、遅延を削減する」と語った。
アマゾンウェブサービスジャパン 執行役員技術統括本部長の岡嵜禎氏は、AWS Wavelengthの特徴として、「AWSのコンピュートとストレージサービスをキャリアのモバイルネットワーク内に設置可能」「AWSリージョンとWavelength Zoneを単一の画面で管理可能」「AWSリージョンのサービスにシームレスに接続可能」「一度開発したアプリケーションをグローバルなキャリアネットワークにデプロイ可能」の4点を挙げた。
岡嵜氏は、AWS Wavelengthを5Gネットワーク内に設置することで、応答時間を短縮し、ネットワーク帯域や転送時間を削減することが可能になると説明した。今回、KDDIからAWS Wavelengthが提供されることになった経緯としては、「5Gを使いたいという共通の顧客が多くいたから」と、同氏は語っていた。
岡嵜氏は、AWS Wavelengthのユースケースとして、「ヘルスケア分野での推論処理」「コネクテッドカー」「スマートファクトリー」「リアルタイムゲーム」「AR、VR、XR」「双方向ライブビデオストリーミング」を挙げた。
丸田氏はAWS Wavelengthが提供する3つの価値として、「超低遅延」「AWSと同じ使い勝手」「従量課金型・即時利用可能」を挙げた。
KDDIはAWS Wavelengthの提供にあたり、TVT、日置電機、ブレインズテクノロジー、日本テレビといったパートナーとともに商用化に向けた実証実験を行い、有効性を確認している。
例えば、電気計測器メーカーの日置電機は複数のIoTデバイスからAWS Wavelengthに配置したサーバーに対して時刻同期し、IoTデバイスの時刻同期精度を測定する実証実験を行い、AWS Wavelengthのサーバーと時刻同期することで、約2ミリ秒の時刻同期を実現することができたという。
KDDIは顧客と共創するための空間として「KDDI DIGITAL GATE 」を設けているが、2021年1月から、同施設で「AWS Wavelength」を体験することが可能になるという。