日本オラクルは12月14日、12月1日に執行役 社長に就任した三澤智光氏による事業戦略説明会を開催した。同氏は5年前に同社を退職した後、日本IBMに籍を移し、この度再び、同社に戻ってきて社長の座についたということで、業界には驚きが走った。今回の会見で、同氏は何を語ったのか。

  • 日本オラクル 執行役 社長 三澤智光氏

戦略の柱は「ビジネス、IT、社会貢献」

三澤氏は冒頭、就任にあたって考案したミッションとして、「Be a TRUSTED TECHNOLOGY ADVISOR」を紹介した。このミッションには、顧客と共にデータドリブンなデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するためのテクニカルアドバイザーになるという目標が込められている。

このミッションを実現するにあたっての戦略は、「Digital Transformation」「Mission Critical Hybrid」「Social Infrastructure」という3つの柱から成る。「Digital Transformation」を実現するためのソリューションは「Oracle Cloud Applications(SaaS)」、「Mission Critical Hybrid」を実現するソリューションは「Oracle Cloud Infrastructure」となる。「Social Infrastructure」については、「Oracle DatabaseやExadataは社会基盤として利用されており、さらに堅牢にすることで、社会貢献をしていきたい」と三澤氏は説明した。

  • 日本オラクルの新戦略

三澤氏は顧客のDXを推進する手段として、自社のDX「Oracle@Oracle」を紹介した。ここで得たノウハウや知見を顧客に対し、展開していく。「Oracle@Oracle」では、クラウドを活用して、データドリブンなDXが進められている。実際に、「営業・マーケティング」「会計」「人事」において、さまざまな成果が得られているという。こうした成果を顧客企業に還元していこうというわけだ。三澤氏はこのように同社のDXが成果を上げている要因として、「クラウド・ネイティブなシングルデータモデル」を挙げた。

  • 「Oracle@Oracle」の成果

この度、同社のDXを推進するリーダーとして、取締役 執行役 副社長 最高執行責任者の湊宏司をデジタル改革担当役員に任命したという。同氏は同社のデジタル化を推進するとともに、DXの成果を定期的に外部に発信していく。

再び、オラクルに戻った理由

Q&Aのセッションで、報道陣からの「なぜオラクルに戻ったのか」という質問に対し、三澤氏は以下のように答えた。

「私はいわば『エンタープライズ中毒』。お客さまに信頼される会社、社会貢献しているシステムを提供している企業で働きたいと思っている。オラクルは真の社会基盤となるシステムを提供している数少ない企業の1つ。かつ、オラクルはビジネスとITの2つの側面から社会貢献できる企業」

また、退社してから5年、三澤氏がオラクルに戻って最も驚いたことはSaaSの変化だったという。「米国の直近の収支報告を見てもわかるが、SaaSは絶好調。私が退職した時、SaaSはそこまでのレベルではなかった。しかし、今や、ビジネスアプリケーションのフルスイートのSaaSを提供でき、世界最大規模のSaaSベンダーになった」と三澤氏。

日本の責任者としてのミッションも当然、SaaSとクラウドの売上の比率を高めることにあるという。「米国を中心としたグローバルではクラウドへのトランスフォーメーションが加速しているが、日本のビジネスはまだオンプレミスのシステムとそのサポートが占める比率が高い。今後は、SaaSとクラウドの比率を高めていく」(三澤氏)

今後の課題は「いかに信頼されるか」

三澤氏は、「オラクルの最大の差別化のポイントは、アマゾン ウェブ サービスやマイクロソフトも持っていない企業が使えるフルスタックのビジネスアプリケーションを持っていること。これから、バックオフィスも含めて、クラウド化が進むことが予想される。われわれは結構いいビジネスがやれるんじゃないかと思っている」と、今後の事業展開に自信をのぞかせたが、課題もあると述べた。

「今現在、お客さまやパートナーに完全に信頼されているかと考えた場合、正直、物足りないところもあるだろう。お客さまやパートナーの声に耳を傾けて、改善していき、『オラクルはいろいろあるけれど、信頼できるよね』と言われるにようになりたい。オラクルを信頼してくれるお客様を増やしたい」と、三澤氏は語った。