11月に入り、国内の新型コロナウイルス感染者が急増している。15日の全国の新規感染者は1400人を上回り、6日連続で1000人を超えた。12~14日には新たに1700人以上の感染者が確認され、3日連続で過去最多を更新するなど感染拡大の「第3波」の様相を強くしている。1人の感染者が平均何人に感染させるかを示し、感染拡大の指標となる実効再生産数も、首都圏や東北、北海道など多くの地域で1を超えた。冬を前に、専門家からは「急速な感染拡大の始まり」との指摘も出ており、事態を重視した政府は強い警戒感を示している。

厚生労働省のまとめによると、全国の感染者は12日に1600人を超えて8月上旬以来約3カ月ぶりに最多を更新した。13日に1700人を超え、14日には前日の数字をさらに上回り、3日連続で過去最多を更新。全国の1週間の合計感染者数は前週の約1.6倍になった。検査数が比較的少ないことから報告される新規感染者数も少なくなる日曜日の15日も1000人以上を数え、今週後半には再び最多を更新するのではないかと懸念される。

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    1日当たりの全国の新規感染者数の増減を示すグラフ(提供・厚生労働省)

人口10万人当たりの新規感染者数は、10月20~26日が全国で3.21人、東京都は7.79人、北海道は5.62人だったのに対し、11月3~9日にはそれぞれ、5.29人、10.65人、17.52人に増え、10日以降これらの数値はさらに増えている。

重症者の数も増えている。全国の重症者数は厚労省の資料によると、10月21日は279人だったが11月4日に319人になり、その後も増加傾向が続いている。受け入れ確保病床数に占める重症者の割合も全国各地で増え、11月4日現在東京都は約26%になった。今後重症者が急増すれば、病床のひっ迫が強く懸念される。

また、11月8日時点の実効再生産数は中京圏が一番高く1.55。次いで、東北地方と関西圏が1.38、北海道が1.36、東京都を含む関東圏が1.06で、広い範囲で1を超えている。同省は8日以降これらの数字はより増えているとみている。

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    新型コロナウイルスの電子顕微鏡撮影画像(提供・NIAID)

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(尾身茂会長)は9日、11月に入ってからの全国的な感染者数の増加を受けて、クラスター(感染者集団)対策や水際対策の強化を求める緊急提言をまとめた。

提言は「社会経済活動が戻る中で適切な感染防止策が講じられなければ、感染の増加要因が強まり、その力が人々の基本的な感染防止策や自治体によるクラスター対策などの減少要因を上回ることになる。最近はクラスターの数も増え、多様化している。そうした中で減少要因を早急に強めなければ急速な感染拡大に至る可能性が高い」と警告している。

東京都の「新型コロナウイルス感染症モニタリング会議」メンバーの大曲貴夫・国立国際医療研究センター病院国際感染症センター長は12日開かれた会合で「急速な感染拡大の始まりと捉え、今後の深刻な状況を厳重に警戒する必要がある」と指摘した。

また、西村康稔経済再生担当相は訪問先の和歌山市内で14日に記者会見し、「さらなる流行になるのではと危機感を持っている。爆発的感染にならないよう政府として対策を強化していきたい」と強い警戒感を示した。

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    新型コロナウイルスの電子顕微鏡撮影画像(提供・NIAID)

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