アンジェスは11月9日、持ち分法適用関連会社で重篤な疾患や障害の原因となる細胞の遺伝子変異を修復、除去することができるゲノム編集技術の開発を行う「EmendoBio」の発行済み株式の100%を2億5000万ドルで取得し、子会社化することを発表した。
アンジェスは、今回の買収の狙いについて、Emendoのゲノム編集技術を獲得することで、既存の治療法ではアプローチできなかった多くの適応症に対応できるようになる事や、両社の知見を持ち寄ることでゲノム編集技術を活用し、ヒトの遺伝子疾患の治療法を進化させる事、米国およびイスラエルにも拠点をおく世界的な遺伝子治療製品の開発企業となることで、目標とする遺伝子医薬のグローバルリーダーに近づくことができると考えられるといった点を挙げている。
なお、Emendoは武田薬品工業ともがん治療の領域で開発を進めているが、その開発は継続していくとしている。
ゲノム編集は、特定の塩基配列を(ターゲット配列)のみを切断するDNA切断酵素(ヌクレアーゼ)を利用し、遺伝子を改変する技術。2020年度のノーベル化学賞に、これまでの技術よりも短時間でかつ簡単に標的とするDNA配列を切断する技術である「CRISPR-Cas9」を発表したエマニュエル・シャルパンティエ博士とジェニファー・ダウドナ博士が選出されたことも記憶に新しいが、遺伝子疾患の治療などヒトへの応用が期待されている技術である。
Emendoは、高精度に特定の箇所を切り取る独自のヌクレアーゼ「OMNIヌクレアーゼ」の開発を行っているベンチャーで、父親由来の染色体と母親由来の染色体、それぞれに載っている遺伝子から見て、もう片方の染色体に載っている相当する対立遺伝子を傷つけることなく編集するアレル特異的遺伝子編集が可能であることから、片方の遺伝子にのみ異常がみられる疾患の治療などへの応用が期待されている。
Emendoはこのアレル特異的ゲノム編集を必要とする市場規模を1.1兆円と見込んでおり、今回の買収は、同市場のシェアを早期に獲得していくことを目指すためだとアンジェスでは説明している。
そのためアンジェスでは、遺伝子治療の領域で2019年にプラスミドを用いた遺伝子治療用製品の製品化の実績があること、その際の創薬開発、臨床開発、上市までの経験を踏まえ、Emendoのゲノム編集技術を活用していくことで、ヒトへの適用に向けた研究開発を加速していきたいとしている。