日本電気(NEC)の子会社であるNEC OncoImmunity(NECオンコイミュニティ、NOI)とノルウェーのオスロ大学病院(OUH)は10月8日、政府機関であるノルウェー研究評議会(RCN)から新興感染症や風土病に対するT細胞診断の迅速なデザインを可能にするAI(人工知能)プラットフォームを開発するための助成金を獲得したと発表した。
このプロジェクトでは、現在世界的に流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、既存の抗体検査を補完する新たなT細胞診断法の開発を行う。これにより、COVID-19の危機への対処に切実に必要となる、その免疫反応及び獲得免疫の識別能力の向上が期待できるとしている。
現状の技術では、病原体のどの部分が強固な免疫を誘発するかを正確に定義するために、多くの試行錯誤を伴う。この、いわゆる免疫優勢抗原エピトープは、一般集団に対して特定する必要があるという。
SARS-CoV-2(COVID-19を引き起こすウイルス)のようなウイルスに対するT細胞反応をモニターするための検査の開発には、手間と集中力を要し時間のかかるステップが必要になる。
COVID-19の脅威の克服には、免疫を持つ個体を同定できる信頼性の高い診断検査が必要になるという。同プロジェクトで開発するAIに基づく診断は、抗体検査を補完し、SARS-CoV-2または他の季節性コロナウイルスに感染後、ウイルスに対して免疫を既に持つ個人なのか、あるいはワクチン接種によって免疫を獲得した個人なのかの同定を目指す。
両社によると抗体診断を開発する技術は容易に入手可能というが、T細胞診断の場合は困難であり、COVID-19の免疫をモニターする際の盲点になっているという。このギャップに対処すべく、NECオンコイミュニティとオスロ大学病院はノルウェー研究評議会の支援を得て、感染に対する潜在的なT細胞の反応をモニターする、AIで設計したT細胞診断の開発に着手した。
信頼性の高いT細胞診断の開発の特有の技術的課題に対し、NECオンコイミュニティの「NEC Immune Profiler」が提供するソリューションによって世界の人々に対応することを目指すとのことだ。