富士ゼロックスは今年の3月、米DocuSignとグローバルパートナーシップを締結し、「電子署名クラウドサービス」を、日本およびアジア・パシフィック地域において販売を開始した。

さらに、7月1日にはWeb完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」の販売を開始。7月8日には、「DocuWorks(ドキュワークス)」とアドビのクラウド型電子サインサービス「Adobe Sign」を連携したサービス「オフィスあんしん クラウドコネクターfor Adobe Sign」の販売開始を発表している。

富士ゼロックスが、国内の3大電子サインの提供を開始した背景や狙いはどこにあるのか、担当者に聞いた。

同社が電子サインサービスを提供する理由について、販売戦略推進部 販売促進室 1グループ グループ長 臺(だい)徹也氏は、「弊社は物売りではなく、お客様の課題を解決することを目標にしていますので、電子サイン単体ではなく、その前後の処理のところは別のソリュションを紹介して、業務全体の課題を解決するようにしています。紙の流れをトータルソリューションで提供できるのが弊社の強みだと思います。そのため、3つの電子サインをもっていることは提案する際の強みになり、お客様の選択の幅も広がります」と説明する。

もともと電子サインの提供の話は、請求書などのプロセスの電子化をする中で出てきた話だという。

販売戦略推進部 販売促進室 グループ長 佐久間亮氏は、「紙だと1カ所でしか確認できませんが、電子であればどこからでも参照できますので、契約書の電子化については、弊社は以前から提案していました。これにより、過去の提案書を利用できます。これまでは、契約するプロセスの電子化はそれほど提案していませんでしたが、この部分を電子化すれば、さらに効率化できるのはないかと考えました」と語る。

  • 富士ゼロックス 販売戦略推進部 販売促進室 1グループ グループ長 臺徹也氏(左)、富士ゼロックス 販売戦略推進部 販売促進室 グループ長 佐久間亮氏(右)

「この機に帳票類を統一化し、最適化するなどしていけば、帳票の数も減り業務改善につながると思います。電子サインの関わる部分の範疇は広いと思います」(臺氏)

また、新型コロナウィルスの影響で、ペーパーレスに対するニーズが一段と高まっている点も電子サインソリューション強化の背景にある。

コロナ禍においては、在宅からセキュアにアクセスできない、社内のネットワークにアクセスできない、外での印刷ができない、紙の業務がまわらないなどの課題があり、4月の緊急事態宣言時の問い合わせは、ペーパーレスファックスソリューションは通常の7倍になったという。また、ネットプリントの利用も増大しており、5月のコンシューマ向けネットプリントのプリント枚数は、前年同期比で約2倍になったほか、4、5月の新規法人契約社数は対前年の約5倍になったという。

さらに、電子サインサービスのニーズも拡大しており、今年のDocuSignの商談件数は、1-3月に比べ、4月~7月(初旬)は約5倍になったという。

電子サインの導入は社外との取引だけでなく、申請や社内文書回覧など社内ニーズも拡大しており、関連サービスの4、5月の契約実績は前年同期比で約3倍になったという。

  • コロナ禍での顧客動向

同社では、コロナ禍で『ハンコのためだけに出社せざるを得ない』という日本固有文化の課題がクローズアップされた事や、政府がテレワーク環境を整えるための補助金支援などを強化した事などにより、顧客から多くの問い合わせが増えているという。

佐久間氏は電子サインについて、「お客様を訪問しなくても、クラウドサービスを使って契約ができる点がポイントだ」と語る。

しかし、電子サインの導入を推進するのであれば、どこか1社と提携し、その製品に注力して販売していく方法もあるが、なぜ、3社と契約したのか。

これについて佐久間氏は、「価格やサービス内容がそれぞれ違うので、1社だけだと、お客様のニーズを叶えられません。それぞれの製品の特徴をお客様に紹介して、幅広いお客様に紹介できるようにしたというのが理由です」と説明する。

では、同社では顧客のニーズに応じて、3製品をどう使い分けていくのか。

佐久間氏によれば、DocusignはグローバルNo.1の導入実績と柔軟な運用設計が、Adobe Signは、PDFとの親和性と富士ゼロックスが提供する文書のハンドリングサービスであるDocuWorksとの連携、クラウドサインは、国内No.1の導入実績と導入が簡単という特徴があり、中小企業がニーズが高いという。

  • 電子サイン3製品の特徴

そして、佐久間氏は、「この市場にはこの製品という風に限定せず、お客様のニーズに合わせて提供していきたいと思っています。Docusignはシステム連携というポイントで案内し、Adobe Signは、オフィスあんしんクラウドコネクターを使って、弊社のDocuWorksとの連携させ、契約だけでなく、社内申請も効率的に運用し、業務全体を見据えながら業務改善していきたいお客様に案内。クラウドサインは、導入が簡単という特徴を活かし、とりあえず電子契約を導入してみたい、すぐに導入してみたいというお客様に案内しています」と語った。