Preferred Networks(PFN)は7月6日、深層学習などAI技術の実用化が進む時代に不可欠な論理的かつ創造的な思考力を育み、世界レベルで活躍できる人材の育成を目指し、コンピュータサイエンス教育事業を立ち上げると発表した。
今回、第1弾として同社は小学生から始めるプログラミング教材「Playgram(プレイグラム)」を開発。総合教育サービス事業を展開するやる気スイッチグループと提携し、8月からプログラミング教室パッケージとして首都圏の3教室での対面授業および家庭でのオンライン授業に順次導入する。
Playgramは、米国のコンピュータサイエンス教育のガイドラインであるK-12 Computer Science Frameworkを参考にした本格的なプログラミング教材として、AI技術開発を手がける同社のエンジニアが開発。
「楽しみながら学ぶ」「創造力を働かせて作る」というPlaygramでの学習体験と、やる気スイッチグループの子どものやる気を引き出す指導メソッドを組み合わせることで、子どもたちが将来のアプリケーション開発に生かせるスキル、課題解決力、自由な創造力を身に付けることを目指す。
Preferred Networks フェローの丸山宏氏は「今の子供たちが大人になったときのプログラミングを考えてみると、今われわれが分かる範囲のプログラミングだけでなく、将来の『計算』の進化に柔軟に対応できる人材が必要となる」との認識を示す。
今後、必要とされるプログラミングの能力として同氏は「創造力」を挙げており、スタートアップのIT人材が該当するという。丸山氏は「伝統的なプログラミングは正解のある問題を解いていたが、新しいタイプのIT人材は正解のない問題を解いている。新しい世代のプログラマーは育成するのではなく、自ら育つ環境を整えることが重要だ」と、アリソン・ゴプニック氏の著書を引き合いに説明していた。
教育事業への参入について、Preferred Networks 代表取締役 最高経営責任者の西川徹氏は「現在、われわれはコンピュータサイエンスを軸にさまざまな応用領域に取り組んでいる。コンピュータサイエンスが『のり』のような役割を果たし、さまざまな専門分野を結び付け、新しい分野・手法を生み出している。これからの社会においてコンピュータサイエンスは、多様な事業・分野の核を支える重要な要素になり、当たり前のように使いこなし、計算を知り尽くしている人の層の厚さは競争力の源泉になると考えている。デジタルを軸にした産業全体の変革を行うためには表面上のITリテラシーを高めるだけでなく、コンピュータサイエンス的な考え方で物事を捉える深い理解を持つことが必要だ。優秀な人材の層を厚くすることで、産業全体の活性化に結び付けたいからだ」と強調する。
同氏は「われわれがコンピュータサイエンスの最先端に触れる機会や、社会の問題をどのように解決しているのかを知る機会、プログラミングを通じて高度なレベルでどのような問題解決を図っているのかなど、問題解決能力を得る機会をすべてを提供する」と話す。
Playgramは、ビジュアルプログラミングからスタートし、タイピング、プログラミングの基礎、Pythonによるテキストコーディングまで、子どもの理解度と意欲に応じて段階的に学習を進めることができる。
加えて、ゲームやARに欠かせない3Dグラフィックを採用し、ロボットを動かしたり空を飛んだり、プログラミングを駆使して課題解決する面白さを体感しつつ、自由な表現力、空間認識能力を身につけることができるという。
さらに、学習データから一人ひとりの得意、苦手分野を見抜き、学習状況を見える化してリアルタイムで共有し、進捗に応じた最適な学びをカスタマイズすることで、プログラミング経験のない講師・保護者でも学習指導を可能としている。
Preferred Networks エンジニアの西澤勇輝氏は「現状のプログラミング教材は、例えばScratchをはじめとしたビジュアルプログラミングツールは、その中で完結してしまっている。そのため、うまく橋渡しできる教材としてテキストコーディングまで進めることを意識して開発した。また、プログラミングの概念以外にもアルファベットが分からない、タイピングができないなど見えないハードルは多くあることから、実践力を身に付ける教材を目指している」と述べていた。
以下はPlaygramの紹介動画だ。
今後、PFNは子どもたちの学習の様子や成果を見ながら継続的に追加コンテンツの開発を進め、将来的にはPlaygramをAR、IoT、AI技術なども組み込んだ、プログラミング教育のプラットフォームとしていく方針だ。